第3話 良いコンビ?
その①
前略
お元気ですか? サラちゃんがウチに来て一週間が過ぎようとしています。
リリアさんと一緒に来た時はオドオドしていて頼りなさそうな印象でしたが少しずつ村に馴染んできています。たまにですが患者さんの対応もしてもらっていますが問題はなさそうです。
私も先輩初心者ですが“新米同士”仲良くやっていますから安心して下さい。それではまた。
ソフィア・ローレン
「ソフィーさん。カルテの確認お願いします」
「いいよ――うん。問題ないね。署名は私が入れるから道具の片づけをお願い出来る?」
「わかりました」
「エドたちもそろそろお散歩から戻って来るだろうし、片付けが終わったらお茶にしよ」
サラちゃんが書き上げたカルテに署名を入れながらお菓子はなにしようかと考える私。
「サラちゃんはなにかリクエストある?」
「え?」
「簡単なものなら出来るよ」
「ソフィーさんお菓子作れるんですか」
「ちょっとならね」
ほんとに簡単なものしか作れないので自慢にもならないけど、村に来てからお菓子作りだけでなく、家事スキル全般が向上したのは間違いありません。言い換えればそれだけ不便だと言うことですが決して不便とは思いません。
「賑やかでなんでも揃う街も好きだけど、私はいまくらいの不便さが好きかな」
「その気持ちわかります」
「サラちゃんも小さな村の出身だったよね」
「はい。あの、ソフィーさん」
「なに?」
「――ケーキ」
「?」
「ホットケーキ、食べたいです。養成学校にいた頃、初めて食べてすごく美味しかったんです」
恥ずかしそうに俯き加減でおやつのリクエストするサラちゃん。なるほどホットケーキかぁ。お店で食べるようなフワフワ加減は難しいけど、せっかくだから久しぶりに作ろうかな。
「メープルシロップは無いから蜂蜜で良い?」
「は、はいっ」
「それじゃ一緒に作ろっか。早くしないと二人が帰ってきちゃう」
「はいっ!」
満面の笑みで応えるサラちゃんはそれだけでホットケーキが好きなんだなとわかりました。なにより、まだどこか緊張が解れきれてなかった彼女が初めて見せた無邪気な笑顔はルークのそれとは違う愛おしさがありました。
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