第50話 魔導融合炉
パンドラには、レーダーとは異なる感知能力が備わっている。
これは機器による機能ではなく、パンドラという人格に備わっている特殊能力のようなものなのだそうだ。
具体的にはエーテルの反応を感知しているようだが、レーダーのように正確な位置がわかるワケではなく、漠然と感じ取れる程度の精度らしい。
特に現代のデウスマキナの場合、搭載されている
さらに何らかのステルス機能にも影響を受けるようなので、ある程度距離が近くないとパンドラでも感知できないようだ。
しかし、神代のデウスマキナであれば膨大な量のエーテルを生成するため、パンドラが感知できない可能性は極めて低い。
だからこそパンドラはあり得ないと判断したのだろうが、あの蜘蛛が神代のデウスマキナに手を加えた半神半人のデウスマキナなのであれば話は変わってくる。
『マリウスには前に言ったと思うけど、私の【シャトー】には【ヘラクレス】に搭載されていた
「そういえば言っていたな。……しかし、そもそもレプリカとはどういったものになるんだ?」
シャルのデウスマキナ【シャトー】は見た目通り鈍重な機体だが、それを支えるに足るパワーも持ち合わせている。
そして、そのパワーの秘訣は【ヘラクレス】に搭載されていた
初めて聞いたときは状況的な問題もあったので知っている風に話を合わせたが、実のところそれが具体的にどんなモノなのか理解できてはいなかった。
レプリカとは一般的に、複製品や模造品を表す言葉だ。
同じ複製品でも偽造品とは異なり、公的に複製をした物や権利関係の問題が無い模造品を指すことが多い。
レプリカは主に一品物だったり普通は流通しない芸術品などを一般に流通させる目的で作成されるが、それ以外にもプロ仕様の機器やマシンを一般層でも扱えるようにした調整版として作成されたりもする。
そしてデウスマキナの場合は武器や兵器以外に大きな制限がないため、軍用や業務用パーツの精巧なレプリカが市場に流通していることも多い。
そういったレプリカは高価だが性能が高く、開拓者の多くがレプリカ機器の導入を目標にしているのだそうだ。
……しかし、それが
問題なのは、
特に
幸い
そのため、近年ではデウスマキナの個人所有は一機までという法律がほとんどの国で採用されている。
では、そんな
過去、人類が
鹵獲後に人類の手が加わったとはいえ、元々は神々の手で作られた神造のデウスマキナである以上、その
できたとしても、それはレプリカと呼ぶに値しない劣化品だと思われるが……
『その前に確認だけど、マリウスは
「簡単にはな」
軍人は何も戦闘技術や操縦技術を学んでいるワケではない。
デウスマキナの構造やメンテナンス方法、機器の取り扱いなどについてはしっかりと学んでいる。
当然、軍には専門のメカニックも存在するが、戦場でのメンテナンスは兵士自らが行うこととなるため必修項目となっているのだ。
『じゃあそれ前提で話すけど、人類は未だに
「……それはわかるが、だからと言って利用することはできないだろう?」
実のところ、現在流通している
それは、生成されたエーテルを直接エネルギーとして利用しているか、変換しているかの違いだ。
エーテルとは
エーテルを直接エネルギーとして利用できるのは、今でも神々の作り出した
では、どうやって人類はエーテルを利用しているか?
それは人類でも扱えるエネルギー源である、電気などに変換をしているからだ。
人類の技術は未だ神々の足元にも及んでいないが、全く進歩がなかったワケではない。
少ないながらもいくつかの技術は解析が進んでおり、そのうちの一つにエーテルを別のエネルギー源に変換する仕組みがある。
そして、人類が開発した人造の
そう、つまり厳密には、人造の
『……ふ~ん? 軍ではそこまで情報が開示されてるんだ?』
「っ! …………まあな」
シャルの意味ありげな声色にハッとし、つい操縦していた手が止まってしまう。
そういえばこの情報は、一般人には開示されてないのであった……
軍人時代なら、まずしなかったような失言である。猛省だ。
『フフン♪ ま、今の時代ネットで調べればそのくらいのことは簡単にわかるし、隠すことでもないと思うけどね!』
俺の失言に気付いたからこそのフォローなんだろうが、年下の少女に気遣われるとなんとも情けない気持ちになる。
『話を戻すけど、マリウスの言う通り神代に製造された
シャルの言う通り、デウスマキナ――厳密に言うと
しかし、砕いた
結果として人類は、質より量を選んだというワケだ。
だから確かに神代の
『でも、その問題は稼働させるに足るエーテルを用意できれば解決できる』
「っ!? まさかシャル、犯罪に手を――」
『んなワケないでしょ!? っていうかマリウスがそれ言う!?』
「パンドラの
『屁理屈!』
未踏領域で
これは国際法で定められている義務であるため、破ればどの国で発見されたとしても重罪扱いだ。
ただ、パンドラは亡国とはいえロームルス帝国の所有物であり、その皇族の血を引く俺には正統な所有権がある。
恐らく世間に認められることはないが、だからと言ってそれを放棄するつもりはない。
最悪疑われたとしても、『キビシス』を使って隠し通すつもりだ。
『まあいいけど――って着いちゃったわね』
木々を避けて低速で進んでいた【シャトー】が動きを止める。
どうやら、目的地に到着したらしい。
『色々話足りないけど、続きはまたあとでね?』
……おい、肝心なところを聞けていないので、かなり気になるぞ?
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