第2話 新しい日常の朝のこと

 翌日の朝のこと、いつものように起きた私は普段どおり洗面台に寝ぼけた姿で向かった。

「あっ……。」

「あら……。」

 当然、朝起きた楓と鉢合わせた。

少し肩紐が落ちたトップスに、程々にユルいドルフィンパンツ。

そして解かれたセミロングの金髪が照明に反射して綺麗に輝いていた。

「おはよう、凜々お姉ちゃん。」

「おはよう……、楓。」

 明らかに調子に乗った声。

こやつめ。と言いたい気持ちもあるけど、少し生意気な義妹も良いよなって思っちゃう私。

「凜々お姉ちゃんってさぁ……。」

「ん?。」

「もしかして、そういう思考あるの?。」

「そういうのって?。」

「えっと……。」

 ぬるりと近づく楓。

呆気にとられた私は洗面所の壁に押し付けれた。

朝風呂したのだろうか。

シャンプーの匂いが距離感を感じさせる。

そして良い匂い。

「もしかして、女の子に恋愛感情があったりする?。」

「えっ……?。」

 どう答えたら良いだろうか……。

そのあまりに直球な質問は私の思考を一時的に停止させた。

いやまああると言えばあるのだが……。

まだ新生活一日目でそれ言うのか……。

それとも私に関する噂を事前に知っていたのか……。

「「ある。」って言ったらどうする?。」

 ちょっと意地悪なカマかけ。

それでも必要なこと。

「そう……、ありがとう。」

 はぇー。

なんですかそのちょっとした照れ顔。

さては再婚前に好感度高い系の義妹か。

そのパターンなのかこれは。

いや、冷静に考えてこれは……、有り得るのか?。

「じゃあ先に着替えて朝食作ってるから、早く着替えて来てね。」

「あっ……、うん。」

 ん?。

サラッとあの義妹、朝食作るとか言ってませんでした。


@


 制服に着替えた私はカバンを片手にリビングに向かった。

キッチンとその手前にはテーブル。

なお使用歴はほぼない。

冷蔵庫にまともな食材もない。

「おはよう、楓。」

「おはよう、お姉ちゃん。できたからそこに座って。」

 エプロンにセーラー服姿の楓が、どこからともなく簡単な朝食をテーブルに並べていた。

パンにマーガリン、スクランブルエッグにベーコン、ミニサラダにコンソメスープ。

どっから錬成してきた。

「楓の朝食はいつもこうなの?。」

「そう。これぐらいしか楽しみがないから……。」

「ごめん……。」

「謝らないで。それで、お姉ちゃんのいつもの朝食はどうなの。」

「うっ……、いつもは適当な菓子パンとインスタントの味噌汁です……。」

「あらあら。」

 上機嫌な煽り口調で笑う楓。

その顔があまりにも可愛いからどうしたものかと。

「何?。」

「いや、可愛いなって……。」

「っ!!。」

 思わず口に出してしまった。

どうやらかいしんのいちげきだったようで。

赤面した顔もまた可愛い。

「もう!。そんな事はいいから早く食べて。」

「ハイハイ。」

 恥ずかしながら怒ってる可愛い楓をよそに、私は義妹手作りの朝食を堪能した。

こうして私の新たな日常が始まった。

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七瀬さんのちょっと歪な姉妹百合 アイズカノン @iscanon

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