帰り道

クライングフリーマン

帰り道

 自転車を漕ぎながら歌を歌う。 ジャンルは関係無い。楽しいからではない。淋しいから。悲しいから。虚しいから。 もう何ヶ月続いているのか?1年と7ヶ月。 母の眠る病院に行き、「1人語り」をし、洗濯物を受け取って、帰る。 僅か15分の面会時間。タイムアップまで待ちきれなくて、12分、11分で病室を出ることもある。 洗濯物と言っても、タオル・バスタオル・肌着。それだけ。帰宅前にコインランドリーに行くときもあるが、違う日に行く場合もある。 母は、基本的に「眠り姫」。まともな会話出来たのは、この年月の間に数回。 あの世では、この世より厳しい修行があると、ある坊さんが言っていた。 やだなあ。この世でも厳しい修行しているんだけど。

 一週間が短く感じられる。

 でも、母の病院への往復は長く感じられる。

 帰り道。

 あの時代の帰り道。

 あの時代の帰り道。

 半世紀以上前の「帰り道」を、ふと考える。

 歌を歌っていた。

 楽しい時もあった。嬉しいときもあった。悲しい時もあった。淋しい時も、虚しい時も。

 聴衆が誰もいない帰り道。

 歌を歌っていた。

 私には、「入る墓」がない。死んだら終わりだ。

 母を送る迄は、死んではいけない。

 曲がりなりにも、「モノカキ」するようになって、応援してくれる人が出来た。

 YouTubeやSNSで「賛成」してくれる人が増えた。

 手前味噌かな?

 家のメンテナンスも、ろくろく出来ずに、「漫然と」ではない生活は続く。

 明日も、どこかの「帰り道」で、歌を歌っているかな?

 アート・イズ・ロング、ライフ・イズ・ショート。

 ―完―


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

帰り道 クライングフリーマン @dansan01

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る