第5話 あの頃の、人との関わり方 

昭和40年~50年代。この頃でも、人間関係のめんどくさい事はそれなりに存在した。

人の噂話とか悪口とか、人のことに干渉する人が居たりとか。

けれどそれに関しては現代も同じで、この頃の方が今より酷かったかというとそういうことでは無い。


逆に、この頃で良かった事はというと、人と人の何気ない交流があり、凶悪犯罪は少なかった。

私の子供の頃は、私が見てきたのが主に田舎だったのもあるけど「空き巣が入った」というだけでも大事件だった。

パトカーや救急車が走ってたりすると、ものすごく珍しいものだから皆んな見に来るし、わーっと人が集まってくる。

どこの家も大抵、勝手口も玄関も開けっ放しだし、知らないうちに誰かが野菜を置いていってくれるとかは普通にあったし。

自転車の鍵をかけてないと盗まれるとかも無かったし。

スリや置き引きももちろん無い。

落とし物をしても大抵誰かが拾って交番に届けてくれる。

現金が沢山入った財布であっても。

そういう意味では、泥棒とか強盗にやられる心配などしなくていいし、いたって平和だった。

近所付き合いも多かったから、見慣れない怪しい人が近所をうろついてたらすぐ分かるというのも良かったと思う。

騙されないよう盗まれないよう常に気を付けたり、殺人事件があっても「またか」という感覚で誰も驚かないような今とはかなり違う感じだった。


友人とか知り合いまでいかなくても、道で会ったら普通に挨拶を交わす。

何となくこの辺りに住んでる人かなあという感じで。

重い荷物を持っている人が居たら手伝ったり。

具合の悪そうな人が居たら自然に助けたり。

子供だけで危ない場所に行っていたら誰かが注意したり。

自分の子供でも他人の子供でも同じように話しかけるし、叱る時は叱る。

そういうことはごく普通にあった。

今は道端で誰かに話しかけたら、不審者か宗教の勧誘か何かのセールスかと、ものすごく警戒されることも多い。

よその子供に近づいたりしたら誘拐犯かと疑われる事も。

それを思うと、あの頃けっこう平和だったなあと懐かしく思い出す。


一人旅を楽しんでも、旅先で知らない人との交流が楽しかった。

行き先を決めずに電車で旅をしたり、泊まるところが無かったら新聞紙を敷いて駅のベンチで寝たり。あの頃はそういうのも大丈夫だった。

今は昔ほど治安が良くないから、そういう事も危なくてなかなかできないらしい。


街で男性から女性に声をかけるのも、あの頃は普通にあった。

そういうきっかけで付き合い始めて結婚まで行くこともあったし、そうでなくても恋愛が始まった。

今だと、セクハラですぐに問題になってしまう。

今はマッチングアプリで知り合って、ラインで会話して・・・という流れが一般的みたいだけど。

私のような昔の人間からすると、なんかその方が抵抗感があるけれど。これも時代の変化なのかもしれない。



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