第2話 当時の買い物と食べ物の事情

田舎だったこともあるけれど、田植えや稲刈りの季節になると学校を休む子がいるのは当たり前だった。

日常の家の仕事、田植えや稲刈りの手伝いの方が優先。

学校でも田植えの体験、畑で野菜を作る体験、蚕を飼う体験など色々やらせてもらえたのを覚えている。

初めてのバイトは小学校の終わり頃で、牛を30頭くらい飼っている家の牛小屋の掃除だった。

遊びに行ったりもしていた家で、バイトは楽しかった。

その頃のお金としてはけっこうもらえたし。


スーパーやショッピングモールのようなものは無く、夕食のおかずを買いに行くにも皆んな買い物籠を持って、八百屋、豆腐屋、魚屋、肉屋、雑貨屋(調味料、菓子)などを、一軒ずつ回っていく。

その日のおすすめが聞けたり、魚はその場でおろしてもらえたり、店の人との会話も多い。

子供の頃、時々親について行って、買い物ってそんな感じなんだと思っていた。

米も当然個人店で買う。


家で、米や野菜、果物を作っているという人も多くて、近所から何かもらうというのもよくあることだった。

昼間は家の鍵なんか誰も滅多にかけないし、勝手口とか開けっ放しだったりするので、入口に野菜が置いてあることも。

沢山できたら配るし、留守なら置いていくから「誰かくれたみたい」ってすぐ分かる。

誰がくれたのか分からなくてもあまり気にしない。

今だったら、誰かが黙って置いて行った食べ物なんか「毒でも入ってるんじゃなかろうか」って、なるけど、この頃はこれが普通。

置いてある物はありがたくいただいて料理して食べる。

逆に自分のところで作って余ったら近所に分ける。

漬物や梅干し、梅酒なんかも家で作るのが普通。

出汁用のカツオブシも、木の箱みたいなやつに刃がついた削り機があって、それで削った物で味噌汁の出汁を取っていた。


私は十歳くらいになると、一日30円の小遣いをもらって駄菓子屋で菓子を買うのが楽しみだった。

大抵の家はこれくらいで、100円もらってる子がごくたまにいて「すごい金持だ」と思ったものだ。

当たり付きのアイスクリームがあったり、ジュース、飴、チョコレート、ガム、透明のプラスチックの入れ物に入ったイカやフライなんかがあった。

この頃はパンはあまり見かけなくて、数年後ぐらいには駄菓子屋に菓子パンが置いてあることもあった。

クリームパン、ジャムパン、アンパンなど。

専門のパン屋さんというのは、そういえばあまり見た記憶がない。


けど、学校の給食はパンだった。

長くて大きいコッペパンで、ジャムやマーガリンがついていた。

先割れスプーンで、パンを割いて中にジャムなどを塗る。

揚げパンの時が一番楽しみだった。

パンに牛乳なのに、おかずは和風だったり変な組み合わせの時もあったけど、おかずもけっこうたっぷりあってそれなりに美味しかった。


普段、屋台で売りに来るのは、ラーメン、焼き芋、ポン菓子など。

年に二回ほどある祭りは小さな規模で、近くの神社なんかでやっていた。

こんにゃくに味噌をつけたおでん、麩菓子、綿菓子、太鼓焼き、たこ焼きなどの屋台が出て、くじ引きや射的もあった。

御輿が通るのを見に行ったりして、祭りは大きな楽しみだった。

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