第27話 百合おじと、水着百合

 ディートマル王子の正体は、マーゴット王女である。

 本来なら、男児であるディートマルが、クーガー家の跡取りだった。

 しかし、彼は早くに亡くなってしまう。

 跡継ぎがいなくなったクーガー家は、双子の妹マーゴットをディートマルとして育てたのだ。そう、男児として。


 しかし、そのワガママボディまでは包み隠せない。


 褐色の肌に、黒い水着がまた映える。


 彼女が女性のまま暮らしていたら、世の男性は放っておかないだろう。


 オレが、百合おじでなかったらな。

 

「マーゴット王女、今回は女性であることを解禁してくれたまえ。誰も、キミを咎めたりはしない。ここはプライベートビーチなので、ナンパヤロウだって来ないから」


「ご配慮、ありがとうございます。ガセート先輩」


「礼なら、ユリウスくんにいうんだな。彼が魔族を倒してくれたおかげで、この懇親会が企画できた」


 ガセート会長が、オレを担ぎ上げる。


「ユリウスくん、キミがいなかったら、魔族を倒せていたかどうか」


「倒せただろ。ティナがいれば、無敵だ」


 ティナの「周囲の人間を強化できる」バフは、ティナ自身にも有効だ。


「そうでもないさ。ティナくんは、たしかに強い。しかし、カコデーモンクラスとなると、互角だっただろう。キミはほぼ、瞬殺だったじゃないか」


 どうだろうか。ティナのバフ効果があったから、余裕で倒せた気もするが。

 

「どちらにせよ、ボクはユリウスに命を助けてもらった。ありがとう」


「礼なんていい。それより、みんなで遊んできたらどうだ?」


 頭を下げられるくらいなら、オレの前で存分に百合を満喫してくれ。

 その方が、オレにとっては報酬となる。


「そうだね。遊んでおいで」


 マーゴットが気後れしていると、ティナがマーゴットの手を引く。


 生徒会の女性陣と、ビーチバレーを始めた。

 

「さてユリウスくん。こき使うようで動かすようで悪いが、我々はバーベキューの支度でもしようじゃないか」


「そうだな。百合ップルたちには遊んでいてもらおう」


 百合を愛でる。これがオレたちへのご褒美だ。

 

「水着の女の子だとしても、百合ップルならそこまで妖艶でもないな」


 ガセート先輩が、火をおこす。


「だな。性的な印象を受けない。これは大事だな」


 オレは野菜を切りながら、百合の風景を眺めていた。 


「キミが守った景色だ。存分に楽しもうじゃないか」


「そうだな」


 

 バーベキューの時間となる。


「あのお姉様、しいたけを」


「しょうがないわね。じゃあこっちのイカを食べてもらおうかしら」


 生徒会の百合ップルが、苦手なものを食べさせ合う。


「ティナ、このピーマンなんて、もう焼けているじゃないか」


「マーゴット様、ニンジンをどうぞ」


 ティナと、マーゴットも同様に。

 

 バーベキューだから苦手なものは避けても構わないのに、あえて掴んで食べさせ合うとか。あら~。


 肉を普通に食いながら、オレは百合ップルの動向を観察する。

 あら~。

 

 シメは、メンドークサが作った鉄板焼きそばを楽しむ。


「夕方は、砂浜で花火をするからな」


 この世界に、個人用の花火があるとは。


「魔法の研究で、炎属性マジックアイテムの開発をしていたのだ。その失敗作なんだが、娯楽用として再開発したんだよ」

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