第24話 百合の究極奥義

「フフフ! ハハハハ!」


 オレは、おかしくなって笑う。


「ユリウスくん? どうした?」


「これが笑わずにいられるか! 滑稽だ! しょせんオレは、おじゃま虫にしか過ぎないか!」


 デーモンのために働かされて、あげく死ぬとは。

 そういう設定だったのか、ユリウスは。

 まったく、滑稽だ。

 骨の髄まで主体性のない、ドクズ野郎じゃないか。


 オレは、つくづく自分がイヤになる。

 こんなどうしようもないヤツに、転生したとは。


「とうとう気が触れたか。お主の場合、ようやく本来の性格を取り戻したといえるか?」


 カコデーモンが、笑っているオレをそう分析する。


「さあ、自分の本来の仕事を思い出したなら、使命をまっとうせよ!」


「……オレの使命は、百合を保護することだ!」


 オレは、デーモンの横っ面に飛び蹴りを食らわせた。 

 

「てやあ!」

 

 魔族の胸板にに、連続でパンチを見舞う。顔面や腹、胸に拳を叩き込む。


「貴様! 魔族への忠誠を忘れたのか!?」


「そんな約束なんぞ、知らん!」


 ただ、オレは自分の信じた道を進むのみ!


「究極の奥義を、ぶちかましてやる!」


 オレは両手を、腰に構える。百合のツボミを象るように、両手を重ねた。


「リリィィーッ、スマアアアッシュ!」


 両手で作った百合の構えで、魔族の腹を貫く。


「散華!」


 魔族の体内で、オレは両手を開いた。百合の花を咲かせるように。


【リリー・スマッシュ】はオレが編み出した、光属性最強のマギアーツである。

 相手に膨大な量の光属性魔法を叩き込むのだ。


「ぐおおおおおおおお!?」

 

 魔族の体内で、魔力の爆発が起きる。


「おおおお、これが百合! 真の百合! 見事なり!」

 

 カコデーモンの肉体が、崩壊をしていく。


「だが、我々の計画は終わらぬ。やがて魔王様は、この地に……てぇてぇエエエエエエエ!」


 デーモンの身体から、光が溢れ出した。魔族を滅ぼす、浄化の光属性が。

 そのまま、デーモンは完全に消滅する。


「ふううううう」


 オレは、呼吸を整えた。


 三人はただ、オレをじっと見つめている。


「こういうわけだ。オレは、魔族に操られていたみたいだな」


 そんな状態のオレを、学校が、ティナやトマが受け入れてくれるはずがない。

 

「ユリウス王子」


 だからオレは、ティナとトマに消されたわけか。

 殺されて当然の行いを、オレはしていたと。


「魔族の関係者が学校にいたら、かなりまずいことになる。退学にするなら、それでよい。さあガセート先輩、ご決断を」


 オレはガセート先輩の前で、ヒザをつく。


 首をはねられても、いいように。


 


「その必要はございません」


 

 オレの後ろに、メンドークサが現れた。


 

「ワタシはユリウス王子のお世話役および密偵をしております、メンドークサ」


 メンドークサは一同に頭を下げた後、オレに向き直る。


「王子、あなたの正体、及びトマ王子がなぜティナ様を殺めようとしていたか、が判明いたしました」

 

「おおかたオレが、『男装している王子を女性と見破られたくなければ、ティナを亡き者にしろ』とでも脅したんだろ?」


「……お見事な推理力です」

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