第22話 百合おじ VS 百合に挟まれたい魔族
ダンジョンの奥に、魔族らしきモンスターがいた。丸く太ったデーモンが、こちらを見て笑っている。貴金属をジャラジャラと体中にまとって、いかにも悪趣味なパリピという感じ。
「あれは、カコデーモン! 強欲を司る、魔族の中でも上位種だぞ!」
「ほう。ワシの姿を見ても心が壊れぬとは。さすが、魔法科学校の生徒というわけだ」
カコデーモンが、うれしそうに笑っている。
魔族は本来、人間界に潜り込むことはできない。魔力が高すぎて、聖女の統べる地上領域に入れないのだ。無理やり外に出れば、たちまち聖女のパワーによって消滅してしまう。
彼らの棲家は、もっぱらダンジョンに限定される。
中でも強力な魔力を放つ場所は、「魔王城」と呼ばれたりした。
「ダンジョン内なら、ワシの本来の力を出せる。忌々しい聖女が自ら出向いてくれるとは。実にすばらしい」
グフフと、カコデーモンが手をワキワキさせた。
魔族が人間界で暮らすには、ダンジョンに引きこもるか、ニンゲンに化けて魔力をセーブして暮らすしかない。それも恒久的に。
ダンジョンにいる魔族は、魔物に指示を送るしかないのだ。聖女さえ滅ぼせば、地上に出られる。そのため配下を使って地上を制圧するか、攻撃対象をダンジョンにおびき寄せる。
ただ、コイツでさえ魔王クラスではない。
「よいよい。強い人間は、実にうまそうだ。今ちょうど、高い魔力に飢えていたところだ」
アクセだらけの指で、カコデーモンがオレたちを差す。
「指輪だらけの手だな」
「違うね、ユリウス。あれは、指から宝石が出ているのさ」
魔法石を、自分の体で製造しているのか。
「配下を送り込んで、地上の様子をうかがっていたが、お前たちが現時点での最強種と思っていいようだ。実にすばらしい魔力量ではないか」
「だが、弱い部下が負けまくっているせいで、お前さんも手詰まりではないのかい?」
ガセート先輩が、カコデーモンを挑発する。
「だから騒ぎを起こして、お前たちに出向いてもらったわけだ。貴様らさえ倒せば、地上に敵はいなくなる。世界を瘴気で満たし、支配してくれる」
手の宝石から、カコデーモンが多種多様な魔法を撃ち出した。地水火風闇と、魔法のショッピングモールになってやがる。
「フン!」
オレはすべての魔法を読み取って、対になる魔法を足に付与した。魔法を蹴り返す。
「ほお! その男はたいした魔力量を持っていないのに、応用が効くのか。大したセンスよ。だが、実に惜しい」
カコデーモンの視線が、ティナとトマに移る。
トマが、ティナをかばうようにして立っていた。
ティナの方も、闘争心を剥き出しにしてデーモンを睨めつけている。守られる気は、さらさらないようだ。
「魔力量は、そこの百合ップルに著しく劣る」
デーモンにも、百合がわかるやつがいたとは。
「ワシは、単に地上を支配したいわけではない。世界を百合で満たしたい! 女性は女性を愛するべきなのだ!」
大真面目な顔になって、デーモンが百合最強説を熱弁する。
「そしてワシは、その間に入る! 百合サンドイッチこそ、我が安住の地!」
ダメだ。こいつは殺すしかない。
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