第17話 悪童の最期を、百合おじは回想する

 招集を受けたのは、オレとティナ、トマとの三人だけのようだ。


 生徒会の女子生徒が二人、ガセート生徒会長を挟んで並んでいる。一人はニコニコしていて、もうひとりはムスッとしている。彼女は食堂で、ティナに噛みついた女子だ。


「立ち話もなんだ。座ってくれ」


 オレたちは、ソファ席をすすめられた。


 ティナ、トマ、オレの順に並ぶ。オレは隅っこでいい。百合に挟まれるなんて、ゴメンだからな。


 なんだ、あのガセート先輩の表情は? 納得した様子の顔つきをしていたが。

 

 おっとりした先輩が、お茶とタワーに積んだお菓子を用意してくれた。

 

 プンスカしている女子を、オットリした先輩女子がなだめている。


 あら~。これはこれでいいね。


 よく見ると、正面に座るガセート先輩もにこやかにしていた。オレたちが棒立ちになっているのを気にして、すぐに正面を向き直ったが。


「急に集まってもらって、本当に申し訳ない。実は、困った事態になってしまってね」


 どうも、付近のダンジョンに魔族が潜伏しているという目撃情報を受けたらしい。


「魔族ですか」


 聖女であるティナが、過剰に反応する。

 勇者の血を引くトマ王子も、同様だ。

 

「三人には僕といっしょに、魔族の討伐に当たって欲しい」


「ガセート先輩が、直々に参戦なさるんですか?」


 トマ王子が驚いていると、ガセートは首を傾げる。


「当然だろ。僕はこの領地、【リリー・アラールレーン】の統治者、カインフェルト帝国の皇太子だよ? 王子自らが出向かずに、どうして民を守れるってんだい?」


 そういえば、そうだったな。


 理事長や校長の次に、ガセートは権力を持っているんだったっけ。そういう設定だったような。うーん、覚えていない。


 とはいえ、生徒会長直々に相手しなければならない、強敵のようだ。

 

「待って欲しい。ティナとトマはわかる。どうしてオレもついてくるんだ? オレなんかが同行しても、足を引っ張る未来しかない」

 

「面白いことを言うね、ユリウスくん。対人戦闘において最強と言われているキミが、足を引っ張るとは思えない」


 ん? オレって、そういう評価だったのか? 


「それに、誰かのために戦えるキミだからこそ、仲間に入れたいんだ」


「ちょっとオレのことを、過大評価しすぎだと思うが?」


「僕は、正当な評価だと思っているけど?」


 うーむ。


「戦力として、来てくれと? オトリとしてなら、わかるんだが?」


「どうして、そう思うんだい?」


「かつてのオレなんて、魔族のエサになるのがお似合いだからな」

 

 ゲーム内におけるユリウスの評判なんて、こんなものだ。ロクにトレーニングもせず、家の金で遊んでいるだけ。人を見たらイジメ倒し、自分より強い相手には媚びを売る。自分のミスはすべて人のせい、って、ひどいヤツの総合商社のようやつだ。


 そのオレを、「戦力」だなんて。

 

「随分と、自分を卑下しているようだが?」


「当たり前だ。ついこの間のオレなんて、つつけば悪いネタしか出てこない男だったからな」


 オレがここまで、自分を蔑むのには、理由がある。


 実はオレ、というかユリウスは、魔族が潜むダンジョンの中で死ぬのだ。つまり、このイベントで死ぬ運命にある。


 ティナとトマは共謀して、ユリウスを魔族の住むダンジョンに閉じ込めるのだ。

 で、ユリウスは死ぬと。

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