第18話 百合ップルを追う、不審者二人
話を聞いて、ティナとトマ王子は承諾した。
「ユリウス王子は?」
「もちろん、行こう」
シナリオ上、オレはあのダンジョンで死ぬこととなっている。
だからこそ、行く必要があった。
オレはティナやトマ王子と敵対しないことで、死亡フラグがなくなった。
だが、油断はできない。ダンジョン行きが、オレの死亡トリガーである可能性も否定できないからだ。
死亡フラグをへし折って生き延びることが、オレの目的ではない。
オレの最終目標は、二人が幸せになる世界を作ることだ。
まだ世界は、百合に寛容ではない。
オレが、この世界を変える。
なので、ダンジョンに向かう必要があるのだ。
見届けてみたい。自分があっけなく、最期を遂げるのか。あるいは……。
「すぐにでも、出発できますが?」
「まあ、そう焦らずとも。翌朝出発だ」
腰を上げたティナを、ガセート先輩が引き止める。
具体的な日時は、生徒会の女子生徒が教えてくれた。
ダンジョンへは、数日かけての旅となる。
欠席中の成績などは、ダンジョン攻略で免除されるとか。
「ありがとうございます」
用事が終わって、オレたちはようやく解放された。
さて、ティナとトマ王子の帰り道でも、ストーキングするとしよう。
アレから、学園周りのきな臭いエリアなどを、叩き潰してきた。
「感謝しておいてやるぞ、ヤン王女」
オレの肩近くで浮いている、ヤン王女の使い魔に礼をいう。
『あたしは、トマ王子の安全を確保したいだけよ! ティナとはいつまでも、ライバルなんだから!』
使い魔越しに、ヤン王女がツンデレセリフを吐いた。
ヤンはリモートで、まだ二人を追いかけている。
『それにしても、この間の女は何者なのかしら? 顔がトマ王子に、めちゃくちゃ似ていたけど』
「そのくらいにしておけよ。さっさと帰るんだ」
長時間の使い魔召喚は、魔力炉に負担がかかる。特に、遠方を映し出す類は、膨大な魔力を消耗するのだ。どれくらいヤバイかと言うと、将来的な潜在魔力の上限値や、魔法発動時の出力量に障害が発生する。
『えっ、気にしてくれているの?』
「そんなわけないだろ。早く召喚を解け。魔術回路に支障が出るぞ」
使い魔にぶりっ子ポーズをさせるな、と。気持ち悪いのだ。
ヤンの使い魔が、消滅した。
これでトマ王子とティナが、百合ん百合んであることがバレないはずである。
「相変わらず、尊いな」
カフェでお茶をしている二人を、物陰でストーキングをしていた。
他愛のない会話をしているだけなのに、周りに花が咲いている。
「実によき。やはり百合こそ至高」
「ひいいい!」
オレが隠れていた街路樹が、ガセート先輩に変わった。
いつの間に擬態していたんだ!? オレが気付けないとは。
「あまり、驚くなよ。二人にバレてしまう」
「うむ。ということは、先輩も」
「そうだよ。僕は百合スキーさ」
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