第三章 百合おじにライバル出現……と思ったら同類だった。

第15話 DLCキャラの生徒会長、百合おじと対面

「では、この問題をユリウス殿……の隣の、ヤン殿」


 太っちょの先生が、ヤンではなくオレを指名してきた。厳密には、オレのの肩の上に浮いている使い魔に。


 使い魔が、手を上げた。


『はい。その魔力付与型マジックアイテムは、過剰に使用すると武器が火属性付与の熱に耐えられません。エンチャント魔法の効果を二〇%減らすか、武器を替えたほうがいいです」


「よろしい。よくできました」


 使い魔に、拍手が送られる。

 

 オレは、ヤン王女の使い魔を引き連れることになった。


 ヤンは登校制限がかかっており、今後はリモートでの授業参加だ。見えないのをいいことに、泡風呂の中で授業を受けてやがる。気楽なもんだ。


「クラス中に、映像を映し出してやろうか?」


「ちょっとやめてよね! そういうのは、あんただけに」


「いらん」


「ひどくない!?」


 ヤンが大声を出したせいで、オレまで「静かに」と怒られてしまった。

 まったく、災難だな。


 昼食の時間になった。

 オレは学食で、うどんを頼む。前世からの好物なのだ。


「隣、いいか?」

 

 向かいにトマ王子と並ぶティナと、同じテーブルに座る。


 二人はおそろいのクリームきのこパスタで、昼食を取っていた。

 あらぁ。


「ティナ。あれから魔族に動きはあったか?」


 うどんを食いながら、オレはティナに声をかける。


「特に。お気遣い、ありがとうございます」

 

 地味な嫌がらせ一つをとっても、放置しておけば大変なことになる。


「できればなにか小さいことがあっても、逐一報告してくれ。こちらで対処する」


「魔族に関しては、我々聖女のほうが処理が容易です。ご無理をなさらず」


 ならば、いいのだが。 

 

「いやあ、ティナ王女ではないか」


 ひときわ目立つ男子生徒が、女子生徒を二名連れてこちらにやってきた。許可も取っていないのに、オレタチの真向かいにドシンと座る。


「ごきげんよう、ユリウス王子。いつもは外のレストランで食べていたのに、うどんとは」


「別にいいだろ? ここのうどんはリーズナブルで、味もいい」


「確かに、見事だ。細かな味の違いが分かる男は、女性のちょっとした変化も見逃さない」


 ホントかよ。


「ところで、何者だ?」


「いや、僕は生徒会長なんだけど?」


 困り顔で眉をしかめて、生徒会長はテーブルに突っ伏した。


「こんなキャラいたっけ?」


 オレは、すぐ後ろに立っているメンドークサに尋ねてみる。


「いましたよ。ガセート・カインフェルト生徒会長です」


 ああ、そんな名前だった。


 そっか、コイツは【DLC:生徒会からの誘惑】のキャラじゃないか。


 二、三回しかお目にかかれないレアキャラだったから、攻略が難しかったよなあ。


 ガセート会長が連れいているのは、生徒会のメンバーだ。地味ではあるが、頼もしさもある。


 ガセート会長も、いわゆるトマ王子の「ライバルキャラ」といえた。学年が離れているため、本編では積極的に絡んでこない。

 だがDLCシナリオにて、生徒会に入れば、出番が飛躍的に上がる。


「ところで、ティナくん。例の話、聞き入れてもらえないだろうか?」


 ガセート会長が身を乗り出す。

 

「生徒会入りは、お断りしたはずです」


 ティナは、きっぱりと断った。

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