第二章 百合王子の正体がバレそうになってドキドキ!

第6話 学級新聞

『ユリウス王子、散歩中のビューティナ・キルヒヘア王女と、同伴していたディートマル・クーガー王子を悪漢から救出!』


 掲示板に、こういった記事の学級新聞がデカデカと貼られていた。


「えーっと。『現在、悪漢集団が何者なのか、調査中』ですか。魔法科学校の報道部と言っても、しょせんはアマチュア写真部ですね。まだ敵の尻尾を掴めていないようで」


 制服を着たメンドークサが、興味なさげに新聞を読む。


 こちらは、情報をとっくに掴んでいるからなあ。

 

「どうだろう? アマチュアと言えど、一応は魔法使いの一団だ。それなりの証拠は掴んでいるだろう。そちらを気にしてやらんと」


「承知しました。それにしても、いいピエロですね」


「まったくだ」

 

 普通、この手の新聞には、『婚約者がいる王女様が、他の王子様とお忍びデート!』といった、ゲスの極まった内容になるはず。

 しかし、悪党であるオレが人助けをしたことで、二人の密会風景をうまくカモフラージュできたわけだ。

 二人はあくまでも、一緒に散歩をしていたに過ぎないと、記事には載っている。


 メイン記事は二人の浮気なのだが、それだと角が立つ。だから、オレの活躍を添えたわけだ。


 つまりオレは、体のいいスケープゴートにされた、と。


「すまないユリアン。大事になってしまって」


 登校早々、トマ王子がオレに謝る。


 気を利かせて、メンドークサが一礼して離れた。


「トマが気にすることはない。二人が無事なら、それでいいじゃないか」


「しかし、これでは」


「二人の仲がバレないことこそ、大事なのだ。気にする必要はない」


 いいさ。二人があらぬ誤解にさいなまれるくらいなら、オレはいくらだってピエロになってやる。


「早く行くぞ。次は体育だろ? 着替えねば」


 今日の一限目は、水泳だ。


 大変なのは、お着替えがあること。


 よりにもよって、オレはトマ王子の隣である。


「ちゃんと【認識阻害】は起動している。着替えて構わない」


 オレは、トマが女であることを知っている。

 トマも、認識していた。


 おそらくオレの魂が転生されたタイミングは、「トマの正体が女だとわかった直後」であろう。


 だから、トマは警戒しているのだ。正体を知られてしまったため、オレを殺害しなければならないと。

 

「だが、まじまじと見られると恥ずかしいものだな」


 トマが服を脱ぐと、太めの「謎の光」がトマの裸体を隠した。


 全校生徒が、【認識阻害】の魔法を使える。認識阻害とは、アニメやマンガで言うところの「謎の光」というやつだ。アニメ作品では修正が入るが、この世界では「自分で」修正を入れる。

 中には、使わないでフルチンで盛り上がるヤロウもいるが。


 オレも気にしないので、謎の光を発動させない。別に見せたいわけではないが、今更恥じらいを持っても仕方がない。オレの中身はただの「百合好きおじ」だし。

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