三二章 見つけた、天体図!
車輪が回転し、大きな
そこからは一気だった。ペダルが
「うわああああっ!」
ニーニョは
すべてがはじめての経験だった。天地が逆さまになり、自分がどこを向いているのか
そこへ行こうとした。そして、気づいた。
「だから、なんだ!」
「そんなこと関係ない! エルを助けるったら助けるんだ!」
本能と直感だけで飛行機を
ニーニョはその
だから、そうした。
真っすぐに突っ込んでいった。うまくいくのかとか、突っ込んだあとどうするのかとか、そんなことは一切、考えなかった。そんな余裕はなかった。ニーニョの頭をしめていたのは『エルを助ける』というその
「ニーニョ!」
エルが
「ニーニョ、ニーニョ!」
そう叫ぶ表情が
信じていた。
きっと助けにきてくれるって信じていた。
その表情がこれ以上ないほどそう言っていた。
ニーニョは喜びを
「うおおりゃあああっ!」
スカヴェットの群れに突っ込んだ。
「エル、つかまれ!」
「ニーニョ!」
真っ向から
エルを
エルは
「ニーニョ!」
手をのばした。
「エル!」
ニーニョの手がのびてきた。必死につかんだ。ふたりの手がしっかりとあわさった。
ニーニョは
「うわあああっ!」
ニーニョは
しかし、それも長くはもたないだろう。
「着地ってどうするんだ⁉」
ペダルをこげば飛ぶ。
それはわかっていた。
でも、地上におりるには?
どうすればいい?
どうすれば激突することなく着地できる?
ニーニョにそんなことがわかるはずはなかった。
せっかくエルを助けだせたのにこのざまだ。このままではふたりとも地面に
「ニーニョ、ニーニョ!」
エルがさかんに
「見つけた、見つけたのよ!」
見つけた?
見つけただって?
エルはいったいなにを言ってるんだ? こんな空の上でなにを見つけたって言うんだ?
「《バロアの
なにを言ってるんだ、エルのやつは? ショックで頭がおかしくなったのか? こんな空の上に天体図なんてあるわけがないじゃないか。
でも、そうではなかった。必死に指ししめすエルの指先は空ではなく、地上を向いていた。
ニーニョは下を見た。息を
そこに、それはあった。目の下に
ゾディアックの
あまりにも
誰もが
エルの言った通り、《バロアの
ゾディアックの
最初から気がついていていいことだった。フラン先生の記録のなかでも、図書室で読んだ本のなかでも、
なにより、
ゾディアック――天体図、と。
天体図の中央に描かれているのは
「あれだ! あれが《
ふたりは同時に叫んだ。
「ニーニョ、なんとかあそこまで飛んで!」
「
ニーニョは
でも、どんなにニーニョがふんばっても、
エルが動いた。ニーニョの後ろに
ふたりがかりでこがれて、飛行機は力強さを取り戻したようだった。フラつきながらもなんとか
「
ニーニョにしてみれば、こうなってくれていっそ助かった。
「うん!」
エルもうなずいた。その手の遊びなら彼女もお手のもの。ニーニョがミレシア家側の
エルの
ふたりは飛行機を
「無事か、エル⁉」
「もちろん!」
ニーニョの
「さあ、さっさとランプのある
「ああ」
ふたりは
「これが……」
「……《
ふたりはどちらともなく
こうして見るとなんともいえない
この火のなかにふたりの血を燃やせば魔王エーバントニアを
「よし、やろう」
「うん」
ふたりは自分の指を食いちぎると炎のなかに血をたらした。ジュッと音がして血はたちまち燃えつきた。ふたりは同時に
「魔王エーバントニア! この
空に
それこそが《門》。
魔王エーバントニアをこの世界に呼びよせるための次元の
《門》がゆっくりと開いた。その奥にはたしかに見たことのない色の空間が広がっていた。
やったのだ。
自分たちはたしかに次元の
ふたりのなかに
その思いはすぐに
それは数えることもできないデイモンの群れだった。
ニーニョは
エルがその場にへたり込む
後からあとからデイモンは表れてくる。どれほどいるのか数えることもできはしない。スカヴェットのような小物とはものがちがう。はるかに強力で
すすりなく声がした。
「どうして? どうしてこんなことに?」
エルがへたり込んだまま泣きじゃくっていた。
ニーニョも一言もなかった。どうして、なんで、こんなことになったのか。自分たちは魔王エーバントニアを
自分たちはまたなにかまちがったのか。ちがうことをしてしまったのか。《バロアの
それとも、それとも……本に書いてあったこと自体がまちがっていたのか。
三〇〇年の昔、ドルイド
だとしたら世界は……。
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