三一章 飛べ、飛行機!
「くそっ!」
着地して叫んだ。空を見上げた。スカヴェットはエルを連れたまま丘の方へと飛んでいく。小さな子供とはいえ、それでももっと
「エル、エル、エル!」
ニーニョは走った。必死に追いかけようとした。しかし――。
目の前に壁が現われた。
いままでエルやニーニョがさんざん、自分たちを追いかけるおとなたちを振りきるために使ってきた
このまま
「くそっ、だからみんな言ってたじゃないか! もっと真っすぐな道にしてわかりやすくしろって!」
ニーニョはくやしまぎれに地面を
そんな意見が出るたび、『
空を見上げた。
みると、エルを連れ去ったスカヴェットのまわりにいつのまにか他の何体ものスカヴェットが
エルを
それを見てニーニョはホッとした。とりあえず、目の届かない遠くまで連れていかれる心配はなさそうだ。その間に助けだせばいい。でも、どうやって?
それに、もし、エルを
――なにか方法はあるはずだ。絶対、ある。あるに決まっている。その方法を思いつけばいいんだ。思いつけ!
なにも思い浮かばない。
人間は空を飛べない。その現実がある以上、空飛ぶ魔物を
その間にもスカヴェット同士の争いは|激かはげしさを増している。エルを
スカヴェットたちにしてみればそれでいい。もともと、
さあ、はなせ。ほら、はなせ。そうすりゃその
その声にニーニョは
地面に
その
ある考えが
分厚い雲におおわれた空から差し込む
そうだ、その手があるじゃないか!
ニーニョは中央広場めがけて駆けだした。そこにあるじゃないか。人間が空を飛ぶための翼、レース用に作られた人力飛行機が!
――まってろ、エル! 絶対、助けてやるからな!
ニーニョは
スカヴェットに
ニーニョはダナ家の赤い飛行機に飛び乗った。
「お前の一族を助けるんだ、力を
叫んだ。ペダルをこいだ。
重い。
必死に力を込めてももどかしいほどゆっくりとしかまわらない。
当たり前だ。おとな、それも、そのために
「そんなこと言ってられるか!」
この
――くそっ、まってろ、エル。おれが絶対……。
歯を食いしばり、顔を真っ赤にしてペダルをこぐ。その様子に気がついたスカヴェットたちが
食欲に
ニーニョはペダルをこぐのに必死でまわりにスカヴェットの
空では
もちろん、他のスカヴェットたちはそんな声に反応したりはしなかった。これが地上の肉食獣であれば、その声に心を動かして見逃すこともあるだろう。だが、デイモンは獣とはちがう。それ以下の、
それ以外の思いはない!
空でも、地上でも、
エルは必死にスカヴェットの足につかまり、振り落とされないようにしていた。
ニーニョは顔中を真っ赤にしてペダルをこいでいた。そして――。
「わああっ!」
ニーニョは
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