二九章 大泥棒参上!
ふたりはマンホールから飛び出し、
「この門は開けられないな」
「そうね」
エルはケロリとして答えた。
「それでなにか困ったことある?」
「全然」
エルの質問にニーニョは
門が閉まっている?
それがどうした。こっちは部屋にこもってお勉強ばかりしているいい子ちゃんじゃない。
ふたりは身軽に門に飛びつくとスルスルとのぼりはじめた。あっという間にてっぺんまでのぼりきり、
ふたりは着地のあとにポーズまで決める余裕を見せて気取って言った。
「こんな門、北の丘の一本杉に比べたら子供のオモチャみたいなもの」
ふたりは
わざわざ、わかりきっていることを確かめて時間を
ふたりは柱に取りついた。スルスルとのぼった。たちまち張り出しにのぼっていた。そこから
もし、見るものがいれば誰もが舌を巻いただろう。へたな
「へへっ。なあ、エル。おれたちって世界一の
「悪い魔法使いから、きれいなお姫さまを
エルも笑ってそう答えた。
入り込んだそこは客用の広間だった。
「記念に」
そう言うと、壁に大きく書きつけた。
するとエルもすっかり
「負けないからね」
ふたりは書きつけた文字を見て笑いあった。
「よし、決めたぞ、エル。おれはおとなになったら世界をまたにかけて飛びまわり、世界中の人を
「それは無理ね」
「なんでだよ?」
「だって、そうなるのはあたしだから」
「お前なんかに負けるか!」
「あたしこそ、あんたには負けないわよ」
ふたりはにらみあった。視線が
「よおし、それじゃ勝負だ。そのためにはこの
「うん!」
ふたりは笑いすぎて涙のにじむ目でそう言い合った。
そして、大捜索がはじまった。部屋という部屋をのぞいてまわり、クローゼットをかきまわし、箱を見つければそれがどんなに小さいものでも必ず開けた。
そんなことをして、なかに《バロアの
そうも思ったけど、『
それでも、天体図らしきものは見つからない。
結局、そんなものはなにもなく水に
なにもない。
物語には付き物の
まあ、そんな
その自分たちになにも見つけられないのだ。
「この
さすがに
「そうね。これだけ
「ミレシア家のほうかもしれない。行ってみよう」
「うん」
疲れた体に
「よし。だいじょうぶみたいだ。近くのマンホールまで一気に駆けるぞ」
「うん」
ふたりは走りだした。するといきなり、エルが立ちどまった。
「おい、どうした、エル⁉ とまるな、走れ!」
ニーニョは
エルはなにやら
「おい、どうした?」
「うん」
エルは答えた。
「あたしたち、
「
「そう。《バロアの
「
「そうだけど……でも、おかしいと思わない? アカデミーの図書室で見つけたあの本、
あっ、そうか、とニーニョも
エルはつづけた。
「それに、あの本にはこう書いてあった。『
「そうかも知れないけど……じゃあ、なんでおれたちは《バロアの
「そうなんだけど。たとえば、見えているのに見えていないとか……」
その言い方にニーニョは
「なんだよ、それ? 意味わからないぞ」
そう言われてもエルだって困ってしまう。彼女にしてもよくわかっているわけではないのだ。なんと説明していいのかわからず、思わず
「ええと、だから……天体図は見えているのよ。見えているんだけど、それが天体図だって気がつかない……」
エルは
この
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