二六章 ダナ家とミレシア家、その秘密
そこまで一気に読んでからニーニョは首をかしげた。
「変だな。おかしいぞ。おれの聞かされてきた話とちがう。ミレシア家に伝えられている話では、魔王エーバントニアと共に戦ったのはミレシア家の
ニーニョの言葉にエルもうなずいた。
「うん。あたしもそう。『ダナ家の
「
「うん」
「それじゃどういうことだ? この本がまちがったことを書いているってことか?」
「まさか。そんなはずないわ。この本はフラン先生があたしたちのために、わざわざ用意しておいてくれたものよ。まちがったことを書いているはずがない」
エルは熱心に言った。『フラン先生が
エルの言葉にニーニョは
「だよなあ、それじゃどういうことだ?」
「先を読めばきっとわかるわよ」
「そうだな。よし、早く読んでみようぜ」
ふたりはつづきを読みはじめた。
『戦いの終わったあと、魔王エーバントニアは再び次元の
だが、この世界での戦いは完全に終わったわけではない。
自分の
バロアは年老いたキツネのようにズル
このままにしてはおけない。
「君たちが本当に必要とするときがきたのなら、私は再びやってくる」
これは
双子はそう受けとめていた。いつか再び
双子はそのときに
双子が第一に考えたことは自分たちの血をこの世に残すことだった。自分たちの血、すなわちバロアの血こそが次元を越える《門》を開き、魔王エーバントニアを
バロアの血と
そこで双子は自分たちに人間としての名をつけた。双子のうち娘はエスネ、息子はマッキンファーレイを名乗った。それぞれに夫、あるいは妻をめとり、家を
「なんだって⁉」
ニーニョは
「それじゃおれたちは、
表情が青ざめている。そうと知ってさすがにショックだったのだ。
「静かに、ニーニョ。とにかく最後まで読んでみよう」
「……ずいぶん、落ち着いてるな。この本に書いてあることが正しいならおれたちは
ニーニョはムッとした様子で言った。
エルはこのおてんば娘らしくもない
「
言われてニーニョは言葉につまった。しかめっ
「とにかく、先を読んでみよう」
エルが重ねて言った。
ニーニョはしぶしぶなずいた。
『そして、双子は魔王エーバントニアを
ひとつは自分たちの血を混ぜ合わせるために作った《
もうひとつは《バロアの
ふたりの体に流れる血も長い年月の間に多くの人の血が
そのために双子はゾディアックの
『そのときがきたなら《バロアの
しかし――。
そこにひとつの問題があった。
双子はバロアの血を半分ずつしか引いていない。だから、人の心をもった。だが、もし、ふたりの血が
その子はバロアの血を完全に受けつぐ
そんな子を生み出すわけにはいかない。まちがっても両家の血を
魔王エーバントニアを再び
同じ
そこで両家は
だが、なんということだろう。あまりにも長い間、
両家ともに歴史をねじ曲げ、自分たちだけが魔王エーバントニアと共に戦った一族だと
あるいはそれもバロアの
いずれにせよ、このままで全面戦争に突入するのは時間の問題だ。まかり
そのために、王はゾディアックの
だから、この本はいったん、ここで終わりとなる。これから先はアカデミーで学んだ
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