二五章 ゾディアック正史
『いまから三〇〇年の昔。
この世界は重大な
突然のことに人々はなす
ときの王は生き残った人々を城に集めた。魔法を使うドルイド僧と騎士団を中心に戦力を整え、デイモンたち相手に反撃を
バロアの
防ぐことは不可能だった。
人類はあらゆるところで負けつづけた。わずかの抵抗さえ不可能だった。ドルイド僧も、騎士たちも、その他の人たちも、立ち向かおうとしたものたちはみんな殺された。
なぜなら、
そうして
それが
『奴隷になるから助けてくれ!』と、そう叫んだものもいたが
『
いまやすべての人間は
そして、ある日、
――これはいい
そして、さらってきた王女に向かって命令した。
「お前はこれから先、この王の間において唄いつづけるのだ。思いの丈のすべてを込めて唄いつづけよ!」
王女は
それは人々の気持ち、幸せを
それらを表現し、唄いあげたものだった。その
けれど、バロアはちがった。バロアだけはその歌を聞いて満足気に笑っていた。
バロアには心があった。人々の苦しみをこそ喜びとする心が。王女の悲しみに満ちた
何年もなんねんも、人々はバロアの
やがて、人々は
ときの王はそんな人々をなんとか
「あんたがなんの役にもたたないから、こんなことになったんじゃないか!」
そう
王は石をぶつけられ、血が流れるまま立ち尽くしていた。唇を
人々の言うことはまったくその通りだったから。
そんなある日、バロアに子供ができた。
このときにいたってついに、
「終わりにしよう」
王は
「これ以上、あの怪物のなぶりものにされるのは耐えられん。それぐらいならばいっそ全員で
その声は
そんな毎日を過ごすことのさびしさに、彼らはもう
そうだ、そうしよう。我ら全員、死んで人類の
誰もがそう思った。
もし、王の言葉が
そのはずだった。
ただひとり、反対するものがいた。ドルイド僧の
「おまちください、王よ! 死を選ぶ前に我らドルイドに最後の機会をお与えいただきたい」
「引っ込んでいろ!」
「お前たちになにができる⁉ お前たちの魔法など、デイモンにはなにひとつ通用しないことははっきりしているではないか!」
ドルイドの
「
王はそれを認めた。期待をかけたわけではない。どうせ死ぬのだから好きなようにさせてやろう。そう思ったにすぎなかった。
ドルイドの
ひとり、またひとりと力尽きたドルイド僧たちは死んでいった。それでも彼らは
そして、すべての僧の生命を
ドルイド僧たちがそこまでして行なった
存在の次元がちがうのだ。
人間がどれほど死力をふりしぼろうとも、バロアにかすり傷ひとつつけることはできない。しかし――。
その
本来、ひとりの子供として生まれるはずだった
それは生命であって生命ではなかった。生きてはいたが育つ力はなかった。何年たってもバロアの双子は赤ん坊のまま、腹をすかせて泣くことすらなかった。ただ生きて呼吸をしているだけの肉人形だった。
バロアは
人々の苦しみを
そんなある日、
「
バロアはその
「念のために
なるほど、その通りだ。
バロアはそう思った。そこで、そんな人間を
バロアは王女から
双子はそろって元気な泣き声をあげた。このときはじめて本当の意味でバロアの子が誕生したのだ。その泣き声を聞いてバロアは涙を流して喜んだという。だが――。
それこそがドルイドの
彼にはわかっていたのだ。
自分の子に人間の
そのための
そのための
「たとえ
その言葉とともに王女は自らを
そして、王女の言葉は事実となった。
人間の
人々の苦しみに
そんな双子にとっての救いはもう半分の
ついに双子は人間の心に
双子はその
だが、他の世界にはいるのだ。デイモンたちから世界を守るため、戦いつづけている魔法使いの一団が。彼らを
双子は
双子は次元を越える《門》を作り、
それが魔王エーバントニア。
しかし、魔王エーバントニアとバロアの双子の力は
ついに、バロアが
王女の
長い、そして、
バロアはすさまじい
完全に、というわけにはいかなかった。
バロアは不死身だ。『死』という状態をもたない。魔王エーバントニアでさえその存在を終わらせることはできなかった。このままでは遠からず
そこで、魔王エーバントニアと双子はバロアを
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