一五章 王立騎士団
エルとニーニョ。ふたりの家出は当人たちが想像もしなかった事態へと、
ダナ家とミレシア家、双方の
穏やかな天空の
少しでも
そして、もうひとつ。両家におとらず、いや、それ以上にこの事態に危機感を抱いた組織があった。王立アカデミーだ。
校長室にエルの担任であるフラン先生とニーニョの担任であるケネス先生が呼ばれ、校長先生から事情を聞かれていた。
「ふうむ。やっかいなことになりましたね」
ふたりから事情を聞き終えた校長はふたりに背を向け、窓から外を見ながら言った。
「申し訳ありません!」
フラン先生が燃えるような真っ赤な赤毛を勢いよくさげた。
「まさか、あのふたりがこんなことをしでかすなんて……やはり、わたしが甘かったようです。ケネス先生のおっしゃっていたとおり、
「いや、フラン先生」と、ケネス先生。
「こんな事態を予想もしていなかったのは私も同じです。それに『
「たしかに」
と、校長先生。しみじみとうなずいた。
「ダナ家もミレシア家も『一族のものの教育は一族の手で行なう。よそ者の手など必要ない』の一点張りでしたからね。それを説得し、通わせるようにするのは大変なことでした。それを考えると無茶はできないところです」
「ああ、でも、なんでこんなことに……」
フラン先生はいまにも泣きだしそうだ。自慢の赤毛を振り乱し、
「両家とも、この世界を守る使命をもつ特別な一族なのに。その一族同士で争うなんて……」
「皮肉なものだ……」
今度はケネス先生がむっつりと言った。
「両家の血は決して交わってはならない。同時に、このゾディアックの
「その通りです」と、校長先生。
「いまや両家は本当の歴史を忘れ、自分の家系のみに都合のいい話を作りあげ、子供たちに伝えています。国王陛下はそれを
校長先生は深いふかいため息をついた。
「ともかく、我々は我々の
「はい。おそらく……」
と、フラン先生。九割までは自信があるけど、残り一割に自信がもてない。だからつい、言葉を
「あの子たちの仲間に聞いたところではみんなで《バロアの丘》に向かい、あのふたりだけが最後まで残っていたそうですから」
「しかし、一度は帰ってきた。まさか、校長先生。あのふたりがすでに
「それならとうに《門》は開いていることでしょう。ダナ家とミレシア家の人間が操られたとなれば、普通の人間が操られた場合とは危険度がちがいます」
「たしかに。となると、その点だけは安心してよさそうですな」
やれやれ、と、ケネス先生は深い息を
「とにかく、
ダナ家、ミレシア家、そして、《バロアの天体図》。この三つは守られつづけなくてはいけません。どれひとつ欠けても『その時』に
「ふたりはまだ一〇歳です。血が交わる心配はないと思いますが……」
「子供はすぐに成長するものですよ、フラン先生。おとなが思っているよりずっと早くね」
「はい……」
「ふたりの仲間にくわしいことを聞いてはみますが……」と、ケネス先生。
「正直、人手がありません。教師として、他の生徒を放っておくわけにもいきませんし……」
「そうですね」
校長先生は
「国王陛下に王立騎士団の
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