六章 超越者の伝説
エルたちは中央広場のさらに真ん中、つまり、ゾディアックの
長い髪をたなびかせ、
エルたちは
この場合の『魔王』とは『悪魔の王』という意味ではない。『魔法使いの王』という意味だ。
その強大な魔力をもって異界からの侵略者であるデイモンと戦いつづける世界の
三〇〇年前、このドルイム・ナ・テインの地は強大な力をもつデイモンの首領のひとり、
いまでもドルイム・ナ・テインのあちこちに点々と散らばる立ち石の群れは、
だから、ドルイム・ナ・テインの地では親は誰でも言うことをきかない子供に向かって『いい子にしないと
エルも何度そう言われたかわからない。そのたびに『差し出されたっていいもん!
もっとも、内心では『本当にそんなことになったらどうしよう?』とベッドのなかで
「魔王エーバントニア、か」
仲間のひとりがしみじみとした口調で言った。
「ドルイム・ナ・テインを救った英雄。この魔王エーバントニアをこの世界に
「ええ、そうよ」
エルは
「その頃、人々は誰もが
『我々がこの世に生を受けたのはあの怪物の目ににらまれ、石とされるためか。否、断じて否! いまこそ立ちあがり、あの怪物を
『できるわけがない』
絶望していた人々はそう
『やりたきゃひとりでやるんだな』
エスネはあきらめなかった。言われた通り、ひとりで戦いをはじめた。騎士の技とドルイド僧の魔法を身につけ、古い
でも、それで終わりではなかった。バロアは不死身。この怪物を殺すことは魔王エーバントニアにさえできなかった。そこで、魔王エーバントニアはその心臓を体から取り出し、封印することで、バロアを永遠の眠りにつかせた。
そして、魔王エーバントニアはエスネにあとを
エスネはバロアの復活を阻止するために、そして、いつかまたデイモンたちが
そこまで言ってエルは
「つまり、わがダナ家こそドルイム・ナ・テインの地をデイモンたちから守った
そのために冒険してるんだから!
エルは胸を張ってそう付け加えた。
幼い頃から何度、親や一族の他のおとなたちからこの話を聞かされたことだろう。そのたびにワクワクドキドキし、小さな胸いっぱいに誇らしさが広がった。
――あたしは
そのときには自分も剣をもってデイモンたちに立ち向かい、魔王エーバントニアと一緒に戦うんだ。そして、今度こそ、
「そのときはおれたちも連れていけよ!」
仲間のひとりがすかさず言った。
「お前だけそんな冒険して、おれたちはおいてけぼりなんてまっぴらだからな」
「そうよ、そうよ。エルだけが魔王エーバントニアさまと肩を並べて戦うなんてズルい。あたしだってご一緒したい」
「そうだよな。おれたちだってそのためにエルと一緒に冒険してるんだ」
「はいはい、わかってるって」
エルは
「あたしたちは名だたるエル冒険隊。デイモンと戦うときだって一緒よ。みんな一緒に魔王エーバントニアとともに戦うの」
「おおっ!」
と、仲間たちが|一斉カいっせいに腕を突きあげた。
そのとき、別の子供たちの声が聞こえてきた。ミレシア家のニーニョとその仲間たちだった。
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