シン・メリーさん

Karura

第0章 キョクカイ

第1話そして彼女は解き放たれる。

 「私メリーさん。今あなたの後ろにいるの」


怪談好き、いや怪談好きじゃなくても、日本人なら大抵の人が知っている。怪談、メリーさん。ある日突然電話がかかってきて。


「私メリーさん今、○○駅にいるの」

「私メリーさん今、あなたの近くにあるコンビニにいるの」


と、メリーさんがかかってきた人に近づいてきて、最終的には。


「私メリーさん今、あなたの後ろにいるの」


そんな電話がかかってきた後、振り向いてみると、殺されてしまうらしい。

そんなメリーさんに俺は


「あのー、そろそろ振り返ってほしいんですけど」


放置プレイをかましていた。


「いや、メリーさんの怪談って振り返ったら死ぬじゃないですか」


よくよく考えてみてほしい、メリーさんの怪談では振り返ったら死ぬのだ。つまり振り返らなければいい


「死なないよ!誰だよ。そんな言葉付け足したの」


メリーさんは少し怒り気味に言った。どうやら死なないらしい。


「というか、死んだら誰が噂するんだよ。せいぜい顔面をグロくして、見た人のトラウマになるだけだよ」

「いやーグロいのはちょっと、、、」


メリーさんは物理ではなく精神にダメージを与えるらしい。


「我慢しろよ!男の子だろ」

「最近はジェンダー問題でそういう発言には気を付けたほうがいいですよ」

「あっ、すいません次からは、、、って何説教してきてるのさ」


メリーさんはノリツッコミもできるらしい。


「最近は、い抜き言葉使っているやつぶっ殺す会、ってやつがあるらしいので気を付けてください」


ほんとwordで、い抜き言葉書くとすぐ青線でてくるから、、、ありがたいんだけどね。


「あっ、すいません次からは、、、今の団体は聞いたことも見たこともないぞ」

「ノリツッコミは一回で充分ですよ。そんな同じネタこすり続けようという精神がだめだね」


メリーさんは案外ノリのいい性格らしい。


「というか、俺のところにいてもどうせ振り返らないと思うので、違う人のところに行ったらどうです?」


もうかれこれ、最初の「今、あなたの後ろにいるの」から3時間は経っている。


「妖怪っていうのはね。怪談どおりにしか動けないんだよ。怪談どうおりじゃなくてもいいなら、今すぐ目の前に行って、驚かして終わりさ」

「なんか、哀れですね」

「同情するなら、振り向いてくれ」


なんだろう、後ろにいる妖怪がとても哀れに感じてきた。そうだ。


「そんなに振り向いてほしいなら取引しません?」

「取引?」

「そうです。俺は仕事でオカルト雑誌を書いていまして、今とある事件をあたっているんですけど、何か知っていることはないかと」


メリーさんが妖怪なのだとすると、こういうことには詳しいだろう。それにいい加減にメリーさんが可哀想に思えてきた。


「つまり、情報を渡せば振り向いてもらえると」

「そうです。そうです。この仕事、大学出た後すぐ入ったんですけど、正直オカルトとか信じてなくて、初仕事どう書こうか迷っていたところだったんですよ」

「信じてないのにその仕事入ったのか、、、」

「そこしか受かんなくて」

「お前もなんか、哀れだな」


妖怪にすら同情されるとは。


「んで、どんな事件なんだ?」

「おっ、乗り気ですね」

「やるしかないからな、やるならとことんやってやるよ。」

「では取引成立ですね。事件と言うのは今この町で起きている連続殺人事件についてです。すでに30人もの死者で出ていて、そのどれもが密室なんです。警察もてこずっているらしくて、話を聞いても、凶器が刃物と言う事だけしかわかりませんでした。」

「お前に取材を任せたやつは、密室と言う点を見て、心霊事件だと考えたわけか」

「そういうことです。最初は幽霊とか妖怪とか存在するはずないって思っていたので何かしらトリックがあって、人がやっているのだろうと考えていましたが、こんなザ・オカルトみたいな状況に遭遇するとさすがに認めざるを得ないですよね」

「なんだ。出会わなければよかったか?」

「いえ、むしろ最初にあなたみたいな、話ができる妖怪と出会ってよかったです。このままいけば、何かの事件で妖怪に殺されていたでしょうから」

「そうか、そういってくれるとうれしいよ」


メリーさんは少し柔らかい声色で言った。そして一息おいて彼女は言った


「事件についてだが、心当たりがあるぞ」

「本当ですか!?」


正直、こんな早く手がかりがつかめると思っておらず思わず振り返りそうになったが何とか抑える。


「チッ、振り返らなかったか」


なんだこの悪女。


「まぁ、情報があるのは、本当だ。最近、狂暴化した妖怪がこのあたりをうろついていてな、どうせこいつがやったんだろ」

「そんなすぐわかるものなんですか?」

「見てないけどな」

「どうして言い切れるんですか?」


俺は一つ疑問に思った。狂暴化した妖怪と言ってもその妖怪がやったかどうかはわからない、なのに彼女はそう言い切った。俺は狂暴化した妖怪を見たことはないが、実際に犯行現場を見てもないのになぜ言い切れるのだろうか。


「よく考えてみてくれよ。妖怪は人が噂することで生きながらえる。そんな妖怪が人を殺すわけない。けど狂暴化した奴は違う。あいつらは見境なく人を殺す」

「どうして、狂暴化した妖怪は人を殺すのですか?」

「わからない、けど、狂暴化の要因に人に忘れられるっていうのがある。きっと人に恐怖してもらいたかったんだろうな。知らんけど」

「なんか、哀れですね。ってえ!?」

「狂暴化したことないんだから、わかるはずないだろ?」


彼女はそういうと、「夜になったらそいつのとこに案内するから、それまで寝てろ」と言われたが、ゲームなどをして一緒に遊んだ。

 夜、いや深夜くらいだろうか。トントンと肩をたたかれる。おまわず、振り向きそうになるが、何とかこらえる。どうやら寝ていたようだ。危ない、危ない


「チッ、振り返らなかったか」


なんだこの悪女。

時計を見ると、予想通り夜の1時、深夜になっていた。


「よし、行くぞ」


そういうと、彼女は俺に着替えるよう促した。着替えた後、外に出ると夜だからか、少し肌寒く感じた。


「寒」


俺がそういうと


「着替えに戻るか?」


彼女がそう提案してきた。案外優しいところもあるらしい


「大丈夫です」

「チッ振り返らなかったか」


どうやら振り向くことを狙っていたらしい。なんだこの悪女。

 彼女指示に従い、歩いていくと


「ッッ」


異形の化け物がいた。住宅地の道路の真ん中に立つソレは、全身が真っ黒でその高さは近くにある。二階建ての住居の高さと同じくらいある。姿はかろうじて、人の形をしているものの全体が溶け出しており、もはや足はなかった。こみ上げる吐き気を我慢しながら、俺は彼女に問う。


「あれが、狂暴化した妖怪?」

「そうだ。妖怪は忘れられるとああなる。自分の姿が保てなくなるんだ。もともと妖怪っていうのは噂でできいてる。噂が変われば姿も、性格も性質も変わる。知ってるか?私はな、もともと人形だったんだ。持ち主が捨てても、捨てても、帰ってくる人形。それが今や電話で予告してからくる殺人鬼だ。おかげで、手に包丁が握らされているよ」


そう言うと彼女は空笑いをした。彼女と話していると、ガバッと異形がこちらを向いた。


「どうしましょう。どうしましょう。」

「落ち着け、まずは回れ右して、、、」

「それ、振り向いているじゃないですか」

「チッ、振り返らなかったか」


なんだこの悪女。

異形は、足がないからか、のっそりのっそりと近づいてきている。足はとても遅いが、こちらにつくのも時間の問題だろう。


「わかった。そんなに振り向きたくないのなら、教えようじゃないか、暴走化しているやつはなたった、一人の噂でも姿や性質が変化するんだ」

「つまり?」

「鈍いなぁ、お前があいつは攻撃しないと思ったら、してこないんだよ」

「つまり?」

「お前わざとか?つまり、素通りできるってことだよ」

「あ~」

「あ~、じゃねーよ」


俺は言われたとおりに、「こいつは無害だ」と思いながら進むと、すんなりと通れた。


「これが、一度刃が入ったら、すーーーってやつか」


そんなボケを言いつつツッコミを待つと、しばらくして


「何、突っ立っているんだ?」


と遅れてツッコミが来た。


「だめですよ。メリーさん。ツッコミは素早くやらないと」

「ツッコミになった覚えはない」

「このままコンビ組んで、芸人になりません?」

「くまない。それより振り向いてもら、、、」

「そうですか。それじゃあ帰りますか」

「おい、聞いていた話と違、、、」

「まぁ、まぁ」

「まぁまぁってなに!?」


なんか文句言っているが、帰路につく

 家に帰ると、さっそく記事を書く、今日あったこと、狂暴化した妖怪のこと、そんな妖怪と会った時の対処法、そしてメリーさんのことも少し、、、


「おい取引内容と違うぞ」

「わかってますよ。それじゃあ振り向きますよ」


振り向こうと思って、もう一度顔を戻す。なんか嫌な予感がする。あっ


「どうした。いますら不安か?殺さないさ、一日一緒にいたのに信用ならないか?」


「いや、振り返ると、グロい顔なんでしょう?さっきのやつで結構SAN値減ったので」


「SAN?まぁ、知らない仲じゃないしある程度手加減するさ」

「それじゃぁ、行きますよ。せーの」


そして振り向くと

ナイフを振りかぶった。ゴスロリファッションのロリがいた。そしてそのナイフを俺の腹に


「あがっ」


刺した。


「覚えているか?妖怪ってのは、怪談どおりにしか動けない哀れな、哀れなバケモンなんだ」


そう言いながら彼女は近づいてくる。何とか立ち上がろうするも、痛みと恐怖で立ち上がれない。


「最後に、いいこと教えてやるよ。お前が調査していた。連続殺人事件の犯人、私なんだ」


「えっ」


ぶぢゅ、逃げられないようにだろうか、足にナイフを刺される。


「もうお前死ぬし全部話すか、私が紹介した。狂暴化した妖怪実は妖怪じゃないんだ」


そう言いながら首を絞めてくる彼女を投げ飛ばす。体格差があるおかげかすんなり投げられた。


「ゲホッ、どう、い、う?」


彼女は受け身を取ったのか、すぐにたちあがって、俺に近づきながら言う。


「あれは、俗に言う神様ってやつだ。健気だったよ。人間に忘れられて力を失っても、人間を巻き込むまいと、攻撃をせずにいたんだ。お前のおかげで楽に殺せたよ。ありがとう」


そういって彼女はナイフを振りかぶって、、、


※※※


 朝のニュースにて


「昨日、アパートの一室にて男性の遺体が発見されました。警察はこの事件を密室連続殺人事件の犯人の犯行と言う線で捜査を進めるそうです。これで被害者の人数は31人となりました。又被害者の近くにはダイニングメッセージともとれる内容の、、、」

「最近。物騒だな」


そう言うと男は味噌汁をすする。そしてスマホを取って仕事に行こうとしたところに

「プルルルル」

電話が鳴った。


※※※


 目の前の男が死んだ。


「今回のヤツは面白かったな、まさか振り返らないとは思わなかった。そうだこいつはどんな文を書いたんだろうな」


『密室連続殺人事件の謎に迫る

世の中では、実は国が邪魔物の排除の為だとか、一流の暗殺者が、だとか騒いでいるが我々、オカルト大好きっ子くらぶは妖怪の犯行を押す。』


「オカルト大好きっ子くらぶって」


そこからは、今日のことや私が教えたことが書かれていた。最後には


『情報提供者:Mさん』

「健気だね」


私はそうつぶやくと、最後の仕上げに取り掛かる。これをメリーさんがやったように匂わせるのだ。


「そうだな」


何度か物を置いているのだがなかなか見つけてもらえない。


「そうだ」


血文字でも書こう。そうだな、無難に「メリー」にするか、あのクソ神がいなくなって邪魔するものがいなくなったから、明日から忙しくなるぞ、次の標的は、、、


※※※


あとがき

ここまで読んでくれてありがとうございます。

突然ですがこの小説のシステムについて書かせていただきます。

この小説は0章と1章が同時並行で投稿されます。それがどのような化学反応を起こすのか作者にも分かりませんが応援してくれると幸いです。

いいね、コメントをくれると作者が喜びます。

次回、メリーさん死す。デュエ〇スタンバイ

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シン・メリーさん Karura @Karurasann

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