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あれから1週間。
呪いの言葉から感じるリアルな恐怖で、数日間は考えないようにしていた。
しかし、他人に向けられたナイフは、時に極上のエンターテイメントになり得る。
気が付くと俺は『takuya9563』の正体を探り始めていた。
まずはいくつかのSNSで同じ名前のアカウントはないか探してみた。どうせ行き詰まるだろうと想定していたのだが、案外それはあっけなく見つかった。
初めに例のコメントを見つけたSNSと相互関係にあるアプリで『takuya95638』という1文字違いのアカウントを見つけた。そのSNSでも何の投稿もフォローもされていなかったが、一番大きな違いとして、そのアカウントには『神津拓弥』という名前が登録されていた。
『神津拓弥』……アルファベットの羅列と違い、漢字で、しかもフルネームを見ると、急激に生々しさを感じる。
次に『神津拓弥』という名前を検索エンジンで調べてみた。すると、また別のSNSのアカウントを見つけた。やや珍しい苗字(調べると全国に四千人程入るようだが)なので、恐らく同一人物だろう。
『神津拓弥』はそこでもほとんど何もアクションは起こしていないようだったが、アカウントをひとつだけフォローしていた。
そのユーザー名は『ルカ』。
アカウント名は『ruka9563』となっていた。
『9563』?
『神津拓弥』のアカウントにも同じ数列がついていた。
これが偶然ということはないだろう。
……何だかスムーズに進みすぎていないだろうか。
まるで何かに導かれているよう……なんて陳腐な考えが過る。
『ルカ』のアカウントを見てみる。
やはりアイコンも初期状態のままで、見た限りこれも非アクティブなアカウントのようだった。
しかし何の個人情報も垣間見えない『神津拓弥』のアカウントと違い、プロフィール欄に別のSNSへのリンクが貼られているのに気が付いた。タップすると動画共有SNSが開かれた。
そのアカウント名は『ruka9563』。
そこには沢山の画像が投稿されていた。
それは画像生成AIに描かせた女性の画像だった。ざっと見るに、半年ほど前からほぼ毎日1枚(日によって数枚)投稿しているようだ。画像はアニメ風のイラストからリアルな感じのものまでテイストは色々だったが、どの女性も軽くウェーブした長い黒髪が特徴的だ。そして全ての画像にはコメントが付けられている。どれも炎の絵文字がひとつだけ。
さて、これはどういうことだろうか。
まずこのアカウントは『ルカ』本人のものなのか。それとも『神津拓弥』が『ルカ』を騙っているのか。恐らく、後者ではないかと俺は思う。アカウント名の『9563』が共通している点や、アカウントの作成時期が近いという点がその理由だが、何よりこの投稿から感じる偏執的な雰囲気が『神津拓弥』の投稿と似ている気がするのだ。
次にこの投稿の意図するところだ。広告に書き込んでいたコメントが呪いの言葉であることは間違いない。とすれば、これも呪いの類だろうか。
……繰り返される呪いの言葉。
……女性の画像と、炎の絵文字。
思考を巡らせ、俺はひとつの可能性に気が付いた。
写真を燃やすという行為も、ひとを呪う方法のひとつではないだろうか、と。
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