「津田くんだっけ?悪い人には見えなかったけど」

「……そうだね。見た目と違って、お辞儀もちゃんとしてたし」

「婚姻届にはビックリしたけど、まぁあれはウケ狙いの冗談だと思うし」

「あの手のノリはあまり免疫がないけど、雫を立ててるところとかはポイント高いよね」

「そうそう!初対面であんなハッキリ言う人、なかなかいないよ」


 男子との免疫も恋愛の経験値も豊富な二人が、ジェラート食べながら雫に微笑みかける。


「雫はどう思った?」

「……どう?と聞かれても……」


 人生初の出来事尽くしで、昨日から頭がついて行かない。

 というより、今日だってまともに顔を見れなかった。


 彼からの視線は感じていたものの、顔が引きつって普通にすることすら難しかったのに。


「明日も来るかな~?」

「来そうじゃない?」

「来たら、何聞こうか。雫のどこが好きなのかとか、今までどんな子と付き合ったのかとか大事だよね」

「アジア大会で準優勝って言ってたよね」

「来年のオリンピック強化選手とも言ってたよ」

「白修館のHPチェックするから、咲良は空手連盟みたいなやつググって」

「おっけー」

「ちょっと、ちーちゃん、さっちゃんっ!」

「まずは情報収集しなきゃ」

「彼がどんな人なのか、知りたくない?」

「……」


 知りたくない?と聞かれても、こそこそと探るみたいでちょっと。

 けれど、在校中にプロ転向する生徒も多いスポーツ特進科に通うくらいだから、きっと有名だと思う。


 だって、空手のアジア大会と言えば、オリンピックと言っても過言じゃない。

 日本発祥(琉球)の空手は、柔道と並んで御家芸と呼ばれるほど、日本選手のレベルは物凄く高い。

 その代表として出場するだけでも、トップクラスのアスリートだ。


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