売れ残りのポメラニアン
夢水 四季
売れ残りのポメラニアン
おれはポメラニアンだ。
キャンキャンほえるポメラニアン。
かわいい、かわいい、ポメラニアン。
親とのわかれは早かった。
気づけばショーケースに入れられ、人間に見られていた。
いつか、おれを気に入って、家につれていってくれるやつが出てくるだろう。
おれは、待ちつづけた。
待って、待って、待ちつづけた……。
待って、待って……、
いつまで待てばいいんだ‼
おれは、いつのまにか、売れ残っていた!
値段ははじめて店に来たころの3分の1になっていた!
おい、人間! おれは、こんなにかわいいぞ!
見ろ! おれを見ろ!
成長してトイレも、しっかりできるぞ。えらいだろ。
売れ残った動物は、どこかへ連れていかれる。
おれは、いやだ! だれか、おれを買ってくれ!
おれの願いもむなしく、おれはペットショップから、おはらい箱になってしまった。
おれがつぎに連れてこられた先は保護犬カフェというところだった。
「よお、新入り! おまえも売れ残ったのか?」
ダックスフンドが話しかけてきた。
「うるさい! おれはかわいいんだ! すぐに家族も見つかる!」
「そうだといいがな」
ダックスフンドは「スフ」という名前で、みんなのリーダーだった。
おれには「ラニ」という仮の名前があたえられた。
おれはスフから人間へのアピールのしかたを教わった。
待つのではなく自分から人間へむかうこと。
腹を見せること。
いつもえがおでいること。
おれは、まいにちアピールをしながら、待って、待って、待ちつづけた……。
ある日、父と娘がやって来た。
「この子にする!」
「やっぱり、成犬じゃなくて、もっとかわいい子犬の方が……」
「この子がいいの!」
娘にだっこされたとき、おれは、うれしくて泣きそうになった。
おれはポメラニアン。
君の家のポメラニアン。
おれの名前は……。
売れ残りのポメラニアン 夢水 四季 @shiki-yumemizu
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