6話.内部制圧
さぁ、やってまいりました!
危険度Bランクダンジョン深森!
やっと地上からダンジョンに入れるぜ、やったぁ!
「うっしゃあ、じゃあ骨川お前はダンジョン入ったら何もせずに待機や。絶対に何もすんなよ」
「え?なんでで……ああそういうことですか」
ただいじわるをしているわけではない。これはちゃんとした作戦であり、万が一の場合の保険だ。
「あの、これでいいですか?」
BランクのダンジョンはEランクから入れるはずだ。
「はい、みなさんEランクですね。入っていいですよ」
ダンジョンに入ってすぐ、見たことない光景が目の前に広がる。
「こ、これは……」
そこには、日照った森が広がっていてところどころ陰になっている。
そんな森が見える限り永遠に続いている。
「まじで森なのか」
「そうっすね。俺も想像してた光景とはちょっと違って驚いてるっす」
だろうな。どこのダンジョンもこんなに自然が豊かなところは滅多にない。
普通は洞窟のような内装だ。
「じゃあ骨川、ここで待っててくれ」
「オッケーです」
骨川をダンジョン外ではなくダンジョン内で待たせたのには理由がある。
俺自身地上に出たことがなかったので知らなかったが、思念を送ることができないのだ。
おそらく、思念を送ることが可能なのは同じダンジョン内と異なるダンジョン間。
つまり伝える側と受け取る側がどちらもダンジョン内にいないと成立しないのだ。
だから地上では送ることができないし、どちらかが地上にいたら送ることができないと推測した。
そして今、骨川と俺、清水は全員がダンジョン内にいるため思念を送ることができる。
なんならここからデイノに思念を送ることもでき――
『おうアンノ、上手くやってるか?』
『……すぐに終わらせて帰るからもう送ってくんな』
送ることもできるようだ。邪魔だから必要はないけど。
「んで、清水。ここからは別行動や」
「別行動すか?」
「ああ、別行動のほうが対象のストレンジを見つけやすいやろ。そして見つけたらすぐに思念を送って報告してくれ」
「なるほど、分かったっす」
こいつもダンジョンボス務めてんだ。俺が駆けつけるまでに死んだ、なんてことはないだろう。
「あと、ここはもうダンジョンの中だから本気で戦ってもいいぞ?人間にバレても別にいい。ただ殺すのはやめとけ、そういう性質のストレンジが相手の可能性もある」
もしかすると死んだ人間を吸収して強くなる性質を持った自我持ちの場合もありうる。
「オッケーっす。では」
ああ、また会おう。
☆☆☆☆☆
アンノさんと別れたから少し移動した場所で俺は違和感を感じていた。
出会うストレンジが皆、意思を持っているかのように連携をとってくるのだ。
「ッ邪魔くさいっすね。
清水を中心に、彼の支配する領域が展開される。この領域の中では彼以外の生物の生命力、攻撃力、防御力が時間とともに吸い取られてそのままそれぞれ彼の力へと変換される。
展開された瞬間、周囲のゴブリンやオークの生命力を刈り取る。
この技は自我持ちのストレンジにも十分な効果を発揮するので所詮ゴブリン程度の敵は1秒も経たずに枯れ、生き絶える。
この能力は言わば冥闇の二つ名を持つヤミスクスの能力の完全上位互換である。
忍野勇斗に討伐されたヤミスクスの能力は、せいぜい大幅なデバフによる衰弱。
しかし清水怪三もといカースの能力は、対象の大幅な継続ダメージと自身の大幅なバフを同時とするもの。
領域を広げたまま移動することで、死の道ができる。それだけでなく彼の能力は植物にも作用する。
つまり周りが植物で囲まれているこのダンジョンでは彼はほぼ無限にバフを受け続けることになる。
そしてその上限は……ない。
コンディションさえ揃えば最強にも一矢報いる可能性を秘めたストレンジ、それが"呪絶"カースである。
「はぁ……アンノさんどこにいるんすかね。間近で戦ってるところ見たかったのに」
可能性は秘めているが、彼にその意思があるかは別。
「呪砲、バァン、バァン、バァン!」
手を銃のように構え、人差し指の先から魔力を弾として魔力を放出する。
カースの魔力は特殊であり、その弾に触れるとデバフを受ける。
この弾では自身にバフをかけることはできないが、ほぼ永続的に打てて手軽な攻撃手段の割に直接当たると即死ではないが人間なら体力の半分ほどを持っていかれる。
『あ、あのすみません』
『ん?なんだクラッキーか』
『何かあったんすか?』
骨川さんからの連絡となると……なんだ?
『クラン明星の人間が10人ちょいさっき入っていきましたよ、それだけです』
『クラン明星か、分かった』
『また大御所が来たすね』
クラン明星となるとクラン界の三大勢力になる。そんな大御所がこんなBランクダンジョンに来る理由となると……同じすかね。
このダンジョンに自我待ちがいることは地上の人間にも知られている。それならその自我持ちを討伐しに来ても何もおかしくはない、と。
『こっちには来てないっす』
『そろそろ下層やからな、そっちはどう?』
『俺はもう下層入ってるっす』
意外と遅いんだな、アンノさん。丁寧に探しているのかな。
出会わなければいいんだけど、その人間に。
ドゴォォォオン!
「な、なんすか!?上?」
上からものすごい衝撃音が響いてきた。
『最悪や、クラッキーが言っていた人間と鉢合わせた』
『え?まじすか?いくら何でも速くないすか?』
『……ごめんなさい。ほんとは黒男さんたちが行った後すぐに入って行った』
あー、アンノさんちょっと攻略スピード遅めだからちょうど鉢合わせたのかな?
『アンノさん、頑張ってくださいっす』
『こっちの心配はすんな、そっちは対象の自我持ちを探してくれ』
見たかったなーアンノさんの戦い。今から見に行ってもどうせ倒しちゃってるし。
後で一緒に戦えるからま、いっか。
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