10話.”終焉ノ壊波”ウロボロス
危険度Sランクダンジョンボス、”終焉ノ壊波”ウロボロス。今になって分かる。
さっき殺したはずなのに元気に佇んでいることから俺が甘かったのだと自覚させられる。
「正直ここまで容易くやられるとは思わなんだ」
「ってことは次からが本気か」
:意味分からん
:腕大丈夫か?
:当然のように生やすのなんだかな
:心配して損
:でも初めて被弾したな
「そういえば被弾するの今回の配信では初ですね。それにいつもはそこまでダメージ食らってないですけど今回は腕ごっそり行かれましたね」
まさか俺も腕一本持っていかれるとは思っていなかった。油断はしてたがそれでも攻撃を躱す自信はあった。まるで攻撃された気配を感じなかった。
「次は、足だ。そしてそのあと頭をいただく」
「へえ、予告までしてくれて随分やさしいこった」
できれば次で見極めたい。まだ足はある。つまりまだ攻撃されていない。いつ来る?
次の瞬間、足の感覚が飛び、右足とその周囲が削り取られたのを確認した。
「ッやべえなおい!」
すぐに特級ポーションで回復、縦横無尽に動き回る。
視聴者には申し訳ないが話している余裕はなさそうだ。さっきの攻撃で分かったことがいくつかある。
まずあいつの攻撃、投擲とかそういう生ぬるいもんじゃない。殺戮に特化した攻撃だ。おそらく俺の足の周囲の空間まるごと削っていきやがった。
推測するにあいつは空間属性。でもおそらく動き回っていたら攻撃できないと思う。現に俺の頭は胴体にくっついたままだ。
分からないことは空間での転移は可能かどうかということ。可能ならかなり厄介なものになる。
ひとまず攻撃してみるか。縦横無尽に駆けながら一閃、半透明のウロボロス目掛けて放つ。
だが当たるギリギリで無効化される。いや、空間ごと削り取られる。
「なるほど、防御も硬いか」
「危なかったがな、やはり速いな」
危なかったのか?でもやっぱり速すぎると捉えられなさそうだな。
「ぅお!あっぶねぇ!」
止まったら殺られる。
まじで今までで一番厄介だな。雑魚とか言ってごめんよ。
「でもどうする?とりあえず近づくか」
懐に潜りこもうとするが、違和感を感じたので飛び退く。
「っふぅ、やっぱガード硬いよな」
潜りこむ瞬間、ウロボロスと目が合った。
「余も一応このダンジョンの長、そう簡単にはやられんよ」
躱すのではなく、ガードすることから転移系の能力は使えないと予想できる。使えたとしてもどっちにしろウロボロスが反応できんスピードで攻撃するしかない。
「他に攻略法は……ないかなぁ」
ぶっちゃけ前戦った不死身のストレンジより余裕で戦いづらい。
「だけど今まで通り普通に剣振るだけだったら当たらないし、接近して直接斬るのもできない」
どうしたもんかねえ。
:前言撤回、ヤバい
:覚醒しやがった
:半透明なの強者感半端ない
:間違いなく過去最強
:まだ何されたか分かってないの俺だけ?
:そもそも忍野速すぎて映ってない
「もうちょっと様子見るか」
・
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・
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・
・
・
ザザッ、ズサッ、シュッ。
姿は見えずとも、半透明の龍の周りを駆ける影が1つ。
「うん、やっぱ無限だな」
さっきから20分ほど躱すことに徹しているが形勢に変化はない。
「空間属性が魔力消費多いのはファンタジーの鉄則でしょうがぁッ」
「そうか?残念だが余は違うぞ?」
やはりこいつを仕留めるにはさらに速い攻撃で仕留めるしかない。
「っなら……これでどうだ?」
斬撃を飛ばし、そっちに気が向いているうちに背後に周り込む。そして神速の突きを放つ。
果たして結果は―――。
「やはり、反応できなかったか」
突きによって放たれた衝撃波はウロボロスの右翼を貫通、破壊していた。
「貴様、この状態の余に……よかろう、これで最後だ。構えろ……一度、こういうのをしてみたかった」
なになに!?一応構えるけどこれってあれ?あの漫画とかであるやつ!?
「いいぞ、俺の本気の一撃で殺してやる」
両者、構える。
ここで忍野勇斗の姿がやっと視聴者の目に映る。
:なになに!?
:急に現れたぞ
:構えてる
:おいおいこれってまさか
:ああ、次の一撃で決まる
:頼むから勝ってくれ
何故か、なんて分からない。ただウロボロスが攻撃してくる気がした。
確証なんてない、ただの勘だ。俺はそれを合図と受取り、出せる最速の速度でウロボロスの顔面めがけて突きを放つ。
ウロボロスも、攻撃しようとしたのだろう。だが俺のほうがほんの一瞬早かった。
突きが顔面に直撃、ウロボロスは倒れる。
「やはり、余の負け、か。だが楽しかったぞ、人間」
「俺も、久しぶりにヒヤヒヤしたよ」
:うおおおおおおお
:えぐううううううううう
:勝ったアアア
:いよっしゃああああああ
:かっけ
:強者の対話か
:よおおおおおおおし
やがて、ウロボロスが息絶えるのが分かった。
「今度こそ、終焉ノ壊波討伐完了です」
:やっぱダンジョンボスなだけあった
:急に手のひら返すのほんま笑う
「おーい、勇斗さぁーん!」
リナと弥生さんがこちらに走ってくるのが見える。
「リナ、それに弥生さん。終わった」
「ちょっとは気をつけて、腕とか大丈夫なの?」
「腕はまぁ、大丈夫すぐ治したから」
腕をぐんぐん回して平気なことを見せる。
「はぁ、それなら良かったけど。もし万が一勇斗さんに何かあったらって考えたら……」
「うん。勇斗にはできるだけ無傷でいてほしい」
そんなこと言われてもなぁ。今のボスみたいなのが他にもいるわけだろ?
負けないにしろ、無傷は厳しいんじゃないかな。
「まぁそれは置いといて、あれ何?」
さっきから無茶苦茶気になっている方角を指さす。
「あれ、卵だよな」
「どれ?見えない」
・卵って言った?
・視力良すぎだろ
・卵⁉︎
・もしやあの龍のでは?
・まっったく見えん
「こっちこっち」
「どこよ」
卵みたいなものがある場所まで連れて行く。
「ほら、これ」
「うわ、確かに。これ卵かしら」
・まじで卵やん
・持ち帰れ!
・どんな味するんだろ
・食ったら死にそう
・孵れ
「いや流石に食いませんって、じゃあ持って帰って孵しますか」
「「え?」」
「いやいやいや、ストレンジの卵だよ!危ないって!」
「危なかったら殺せばいいだろ」
:正論
:生まれてすぐにこいつに出会うとか無理すぎる
:もはや卵が可哀想
「意外とデカいな。ぃしょっと」
片手で抱えるように持つ。
「まぁ私はどっちでもいいけど……何かしら、これ―――」
地面に大きな黒いモヤ。
完全に油断していた。ボスを倒して、さらに卵まで見つけて。
「っ⁉︎勇斗!」
弥生さんの足に真っ黒の何かが絡み付いている。そして引きずり込もうとしている。
すぐに助けに出る。まだ間に合う。
「今助け……」
なんだこれ、攻撃できない。あの絡み付いている物体さえ斬れればいいのにそれが何故かできない。
そして、弥生さんは闇の中に引きずりこまれた。
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