9話.破獄ボス、ウロボロス
今まで6体の自我持ちと呼ばれる強力なストレンジを討伐してきた。
そのうち5体はこの破獄ダンジョンの自我持ちだった。
炎獄龍ヘルバースト
地獄の炎を司る龍。その炎は戦うに連れて温度を上げ、最終的には10000℃まで上昇する。
戦いが長引くと手をつけられなくなるため、接敵からできるだけ早急に倒す必要がある。
爆地龍グロウド
地獄の大地を司る龍。一撃で大地を翻し、大規模な破壊力を誇る。もし地上に出たとすると1番被害が大きくなるであろう龍。
天淵氷炭ユキクオン
地獄の氷雪を司る龍。炎獄龍とは対象的に戦うに連れて周囲の温度を下げてゆく。最終的には絶対零度である-273℃まで下降する。同じく早急に対処すべき敵である。
燦爛玲瓏コウゴウ
地獄の極光を司る龍。常に輝いており、光の中、どこかにある核を破壊しない限り死なない所謂実態がないストレンジ。核レベルの攻撃が繰り出される。しかし範囲攻撃しかできないし、溜めの時間があるため一撃さえ凌げば討伐が楽になる。
冥闇ヤミスクス
地獄の闇を司る龍。常時、周囲の光を吸い込み闇を散らす。暗闇そのものが龍であり、コウゴウと同じ実態を持たないストレンジ。攻撃手段は主にデバフ。死ぬまで衰弱させられる。5体の中では一番討伐が楽なストレンジ。
「今までの奴らの総まとめって感じか?」
目の前にいる破壊の化身としか呼べないストレンジを鑑定する。
「終焉ノ壊波、ウロボロス……」
今までの、それぞれの性質を取ったような二つ名じゃない。二つ名は普通、相対した人物がその恐ろしさを伝えたり、聞いたらすぐに想像できるようなものである。
例えばヘルバーストには”炎獄龍”という二つ名があった。これを聞けばすぐに、何か炎系の攻撃をしてくるとわかる。
「だがこれはなんだ?”終焉ノ壊波”?」
多分コメント欄であった、何をされたか分からないってのがその根源だと思うけど。
それにしても分からなさ過ぎる。
「ついに奴らは余を見捨てよったか……」
見捨てた?何にしろその言葉の真意は掴めない。
:二つ名やばすぎだろ
:重度の厨二病患者かな
:別格の予感
:これは期待
:見捨てたって何
:見捨てられたの可哀想
「先手は譲ってやる」
どうやらお優しいボスさんは先に攻撃させてくれるらしい。
「じゃあ、ハイッ!」
譲ってくれた先手を無駄にはしたくないのでとりあえず無数の斬撃を叩き込んでみた。
「っ!?」
しかし当たった感触がない。当たっていないのか?
前にも似た感覚を味わった事がある。となると次にこいつがしてくるのは……あれか!
「やべッ」
かなり離れているが背後にリナたちが来るように移動、カメラも俺の後ろに移動させる。
ここまでコンマ数秒。直後、ウロボロスの攻撃が成される。
黒色の光が輝き、爆発的な破壊が行われる。この技は俺自身見たことがあった。だから対処が可能だ。
何らかの作用で色は変われどその本質は全く同じ。
燦爛玲瓏コウゴウの行う大規模破壊攻撃である。
「っらああああああ!」
この攻撃に対して俺が出した最適の対処法。それは刀を振る余波で衝撃を相殺することである。
多分俺以外にできるやつなんて多くはいないが。
とにかく振りまくる。イメージは、目の前にある空間を斬りまくる感覚。
「はあ、はあ、はあ、耐えきったな」
初手がまさかこの攻撃だとは思っていなかった。だが一度経験していたお陰で俺と、後ろのリナたち、そしてカメラは守ることができた。
「人間……やるな」
ウロボロスは龍の姿に戻っている。やはり斬ったからだろう。
「まさか斬られるとは思わんだ」
「2回倒してんだ、感覚でどこか分かる」
俺が斬ったのは核だ。どっちがどっちか分からんが2つ斬った。
おそらく光が黒くなっていたのは、ヤミスクスの技も同時に使ったからだろう。光属性の技が闇属性によって侵食され、黒く変貌する。
それが、何をされたか分からない攻撃の正体。
:何いまの
:攻撃したと思ったらされたんだが
:なんも見えん
:てかあっさり耐えてるの草
:当たり前のように無傷
「では、これはどうだ?」
ウロボロスの立っている場所から地面が崩れる。
「これも、あれ、か!」
地面を蹴って宙に舞う。
空にいる限り地面からの攻撃は受けない。
「これは避けまい」
なんだ?地面が盛り上がったりするのか?
いや違う!これは炎獄龍の!
ウロボロスの口が大きく開き、赤く光っている。そして放たれる、灼熱のブレス。
「やっぱ全部かっ!」
ブレスごと、ウロボロスを斬る。
「グハッ、やはり、そうか」
ウロボロスは分かったようだ。
「そうだ、お前は俺には勝てない」
おそらく今ので炎は使えなくなっただろう。こいつは5つの龍の技を使ってくるし、5回殺さなければならないのだろう。
だがそれだけだ。どれも一回倒している。俺の敵ではない。
確かに初見であの攻撃は全滅しかねないが、それだけだ。今、ウロボロスは怯んでいる。この隙を逃すわけにはいかない。
塵になるぐらい斬り刻む行為を2回繰り返す、これで終わりだ。ウロボロスは言葉を発することなく崩れ落ち、肉塊となる。
「視聴者さん申し訳ない、雑魚でした」
あまりに弱かったのでせっかく見に来てくれた人たちに申し訳がなさすぎる。
・あまりに弱い
・最初だけかい
・いや、こいつがおかしいだけ
・ぶっ飛んでるな、こいつ
・今までで一番速かったな、倒すの
「やはり全ての攻撃を事前に体験しているのが大きかったですね、全部初見なら遥かに苦戦してました」
だが倒してしまったのは事実。
「ではボス討伐終わったので地上に戻りますか。とりあえず配信はここまでです」
:はあ
:もっと熱いバトルが見れると思ったのに
:期待外れ
:次に期待かな
:頼むぞほんま自我持ちさんよ
:おつかれい
「ほんとに弱かったですね、結局無傷ですし……は?」
体を見渡した瞬間、大きな違和感が体を襲った。急に右肩から下の感覚が無くなったのだ。
右腕がごっそり削り取られている。いつやられた?攻撃された気配はなかった。
すぐに空間袋から特級ポーションを取り出して回復する。ポーション使ったのいつぶりだろうな。
腕がちゃんと生えてきたのを確認した後、おそらくこの攻撃をしたであろう者を見据える。
そこには体が半透明になり、それでいてさらに禍々しいオーラを纏っている終焉ノ壊波の姿があった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます