8話.危険度Sダンジョンボス

side 忍野勇斗


 いつもどうり破獄ダンジョンの前、人通りが少なく、明らかに異様な雰囲気を漂わせるダンジョンの入り口。


 俺はそこでただ、配信の準備をする。


 俺が配信者になったきっかけは単純だ。よく分からないけどリナって人を助けたら配信者になることをおすすめされた。


 それが俺の配信者生活のオリジン。


 実際やってみたら俺はかなり強かったらしく、今のところ負ける気がしない。


 危険度Sランクのダンジョンの自我持ちはかなり強く、俺が鍛えてたダンジョンの比ではないけどそれでも勝てる。


 視聴者も俺が無双するのが見たいみたいで、いい感じに人気も取れてる。


 配信者を初めて約半年、最近はいろんな人とコラボするようになった。


 なぜか女性が多いが。


 今日も、ダンジョンボスだと言うのにリナがコラボ依頼してきた。


 ボスと戦うときは避難させておくからいいけど。


「あっ、勇斗さんいた!」


 俺を見つけた瞬間、ニッコリ笑顔で走り寄ってくる。


「なぁ、俺知らんけどそっちの視聴者は大丈夫?ほら、ガチ恋とかいるって聞いたけど」

「うーん、大丈夫なんじゃない?多分」


 多分じゃなくて絶対にしてくれ。


「今回の敵はダンジョンボスだぞ?まじで危ない可能性だってある。それでも来るのか?」

「うん。だって勇斗さんが護ってくれるでしょ?」


 うん、まぁそうだけども。


「でもまぁ今回は弥生さんも来るしそこは安心かな」

「そうなの?私聞いてないんだけど」


 あれ、言ってなかったっけ。


「ちょうどリナと同時にコラボ依頼来たからオッケーしたよ?」

「むぅ……まぁいっか」


 なぜ怒ってる?分からん。


「ちょっと、私を置いてなにか楽しそうねぇ?」

「あ、弥生さん来ましたか」


 弥生さんは俺より2つ上の探索者で俺を除けば最年少Sランク探索者なのだそうだ。


 しかも容姿が整ってるから男性人気がすごい。


 大丈夫かな、俺刺されたりしないよな。まあ刺しにきても返り討ちにするが。


「今回のボスって不死身なんすか?弥生さん」

「いや、分からない。見たことがある人しかいないから、不死身がどうかは分からない」


 まあ倒した人がいるならボスは死んでるわな。


「一応不死身ってことも視野に入れといたほうが良さそうだね勇斗さん」

「そうだな。もしものことがあれば逃げれるように」


 前に不死身のストレンジと戦った時はクラン碧白の情報があったから勝てたが、初対面で不死身だとどうにもならない。


「とにかく配信始めるか」

「分かったわ」

「オッケー」


 カメラを取り出し、配信開始ボタンを押す。


 配信名が「危険度Sランクダンジョンボス攻略」なだけあって同接数が開始直後からとてつもなく多い。


「めっちゃ接続多いな」

「そりゃあダンジョンボスなんだもん!ダンジョンボスなんてほぼ見ないし、しかもそれがSランクダンジョンのボスってなったら誰でも見たくなるよ!」


 そうなのか?でも実際同接多いしな。


「弥生さんは見たことあるのか?ダンジョンボス」

「ええ、私は何度か。Aランクが一回だけど」


 やっぱ見てるのか。俺初めてだからちょっと楽しみだわ。


「ていうか勇斗さん相変わらずすごいね」

「ん?何が?」


:ほぼ周り見ないままゴブリンども塵になってるの笑う

:見ないまま倒すはありえるけど塵はもう意味分からん

:どやってんのそれ

:相変わらずバケモンで安心

:人間じゃねぇ


「ほら、みんなも言ってるよ?」


 んー、でもこれは敵倒しまくってたらこうなってたからそうとしか言いようがないんだよな。


 ヨシっ。じゃあこうするか。


「俺ちょっと休憩したいからさ、2人で最深部まで連れてってくれない?」

「え?」

「ええ?まぁいいけど」


 そのときなんかアドバイスできることがあるかもしれないし。

 

 てかなんなら俺ちゃんとこの2人の戦闘を見たことがないんだよな。


:鬼畜で草

:鬼教官

:キッツ

:でも自我持ちおらんからいけるのでは?

:自我持ちいないからまぁ、無理ではないか


「そうね、自我持ちがいないから私たち2人でもいけると思うわ」

「え、そう?じゃあやる!」


 この2人今は仲いいんだけどたまに仲悪く見えるんだよな。


 こっちとしては仲良い方がもちろんいいんだけど。


「んで、ボスの名前なんだったっけ」

「見てないの?」

「いや、見たけど忘れた」


 どうせ対峙したら鑑定で分かるし、そこまで覚えようとは思わんよ。


:なんかやばい名前だったと思う

:ウロボロス

:めちゃくちゃ強キャラっぽい名前

:二つ名は秘匿されてた

:なんだったとしても倒すだけでしょ!


「ウロボロス、か」


 こりゃまた強そうな名前だな。二つ名は広まってないんだな。ボスって感じだ。


「じゃあお二人さん、頼んだよ」

「「はい!」」


「みなさん来ましたよ、最深部」


 2人が意外に強かったことと、出てくるストレンジが見たことある奴らばっかりだったことで数時間で来ることができた。


・きちゃァァァァァァア

・さぁボス戦だな

・どうせすぐ終わるだろ笑

・今回も倒しちゃってください!

・ボスの能力が気になる

・確か強すぎたせいで何が起こったのか分からんだらしい、出会った探索者によると


「強すぎて何が起こったのか分からない、ですか」


 それは期待ができそうだな。でもその探索者よく逃げれたな。


「はぁ、はぁ。さぁ勇斗さん、あとは頼むよ!」

「ええ、やばくなったら加勢するけど多分必要は無さそうね」


 リナが息を切らす一方で、弥生さんは涼しい顔をしている。やはりSランクとBランクではかなり差があるのだろう。


「じゃあアドバイスするけど。リナは反応って言うかストレンジに対して怖さがあるのかな」


 攻撃する時いつもちょっと躊躇いがちっていうか、敵の攻撃を警戒しがちな気がする。


「もっとガンガン攻めていいと思うぞ。魔法も結構威力高いし」

「ん?ありがとう?」


 リナの魔法は俺が今まで見た中でもかなり強いと思う。


 そりゃSランク探索者の魔法には及ばないけどそれ抜きにしたら多分最上位。


「じゃあ次弥生さん。弥生さんはなんていうか、刀変えたほうがいいんじゃない?」


 思ったことをそのまま伝える


「やっぱりそう思う?この刀ずっと使ってるんだけどそろそろ変え時かしら」

「うん、変えた方がいいと思う」


 俺の刀はダンジョンでドロップしたやつだから斬ることに関してはピカイチだけど、弥生さんの刀は買ったやつなんじゃないかな。


「何個かいらない刀持ってるからあげよっか?」

「え?いいの?」


 正直刀なんて一本でいい。俺の愛刀は絶対に折れないし刃こぼれしない効果が付いてるから安心だし。


「何本もいらないからもらってくれるならもらってくれ」

「あ、ありがとう」


・うわ、俺も欲しいわその刀

・今持ってる刀もなんか、無駄なく研ぎ澄まされたって感じだもんな

・無料であげるの強者すぎだろ笑

・弥生めっちゃ特してて草

・ボスはよ!


 多分まだまだ伸びるんじゃないかな、弥生さん。


 あと、リナがジーって見てくるけど何もないぞ?特にあげるもの。


「んじゃあ。行きますか、ボス退治」


 新しいエリア、それも最深部のボスがいると思われるエリアに足を踏み入れる。


 そしてすぐ、強烈な気配を感じる。


「っ!リナ、弥生さん。下がってて」

「うん、分かった」


 流石にリナも弥生さんもやばい気配に気づいたらしい。


・おいおい、画面越しでもビリビリ来るぞ

・勝って!

・今までで1番やばいなこいつ

・頼むから死なないでくれ

・まだ姿見えてないのにこの圧はやばすぎ

・今回もちゃちゃっと倒してくれ!


 いやぁ、今回のこいつ。流石ボスって感じでやばい。

 コメ欄でもあったけどめちゃくちゃビリビリ来る。


「よし、行ってくるわ」

「うん、勝ってね!」

「まぁ、死なないようにね」


 地面を蹴って、気配の元へ向かう。


「あれか」


 見えた瞬間、違和感を感じた。意外と小さかったのだ。


 このデカい気配、もっとドデカいのかと思ったがそうではないらしい。


「こいつあれか、力を凝縮してるタイプか」


 小さいドラゴンだが、その体に秘めるエネルギーは今までのドラゴンとは桁違い。


「さぁ、ボス討伐といこうか」











 

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