45話 セインとの最期
「……ここは? 」
「セイン様、ここは学校の近くにある公園で魔力のふきだまりとなっている場所です。今しがたアルガルドへ転移できる魔法陣が完成したので……このまま一緒に帰りましょう」
「あ、そっか……ごめんねアリア。私のわがままでたくさん迷惑かけちゃって」
「いえいえ、これも全て私の役目ですから」
目を覚ましたセインは意外にも抵抗せずにアリアに身を委ね、眩い光に包まれていく。
「魔法陣の効果が発動するまでまだ少し時間があります。こちらの世界に来るのはこれが最初で最後になると思うので目に焼き付けておきましょう」
「うん、そうだね。最初で最後――じゃあもうみんなに会えないのかあ、せっかく仲良くなったのに残念」
みんなとはクラスメイトたちのことだろう。出会って日は浅いがそれなりに楽しそうに会話していたのを見ていただけにみんな急にセインがいなくなって寂しがるだろうな。
「ええ、ミラクレアで会った人間にはもう会えないでしょうね。もちろんタクミにも」
「……うん、わかってる――わかってるよ」
セインの位置からはアリアが壁となって俺が見えていないのだろう。
まあ俺が少しズレればいい話なのだが、現時点でその行動は少し憚られるものであった。
「こっちに来たのはあの男に会う為でしたよね? 最後にもう一度だけ会えるとすればどうします? 」
アリアは後ろの俺を一瞥しながらそう言った。セインの返答次第で最後に俺に会わせてやろうということだろう。
「いや、いいよアリア」
「え? よろしいんですか、本当に――本当に最後ですよ? 」
「うん。別れるのがすごく辛くて苦しいって知ってるから」
あっさりと言われたその言葉はひどく俺の心に突き刺さった。
俺とのアルガルドでの別れ以外にもセインは幾度となくたくさんの人との別れを経験しているのだろう。言葉に込められた思いがそれを物語っている。
「そうですか……ではもう大丈夫ですね? 」
「うん、もうだいじょう……大丈夫! いつでもいいよ! 」
「セイン様……」
セインの目からはポロポロと涙がこぼれ、無理に笑みを浮かべる顔と相まってとてもみていられない。
だがここで俺がしゃしゃりでたとしてこの状況が好転するとも思えない。
別れの言葉を交わさずに会えなくなるのは後々後悔するかもしれないが今のセインをこれ以上悲しませたくないという気持ちが俺の中では強くあった。
自分の意思に反して今にも動き出しそうな足と叫びだしそうな口を必死で抑え、俺は二人の様子を見守った。
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