V ぎすぎすした再会
思えば昔からそうだった。
森の中で離れ離れになったときも、泣きながらエルバを探すヴィックに対し、一人でいる間は決して泣かないのがエルバだ。
だけど再会を果たすと逆転現象が起きる。
泣き止むヴィックに対し、エルバはわっと泣きだしてしまう。
今回、おれは泣かなかったから、おれの勝ちだな。
勝手に勝ち負けを決めて、ヴィックは向こう側で砂の上に座るエルバをぼんやり見やった。
ヴィックたちが巨大骸骨と戦った場所から大岩を二つ隔てただけの場所に、エルバは拠点を作っていた。
近くの船から火を熾せるものを拝借し、濡れた服を乾かしていたらしい。
だから下着姿だったのだ。
そこで膝を抱えて座っていたところ、巨岩の上に立ったヴィックを見た。
だから走ってこちらに来たという。
自分が下着姿なのも忘れて。
だからってなんでおれが叩かれなきゃいけないんだ。
ヴィックは不満を引きずっていた。
あれ以来、エルバはヴィックと目を合わせようともしない。
クロエとゾーイに囲まれたエルバはちゃんと服を着ていた。
ゾーイは人型に戻っている。
ゾーイの着ていた服はクロエがちゃんと持ち運んでいたらしい。
着替えているゾーイの近くに寄るわけにもいかず、立ち位置が自然と男女で別れてしまった。
ヒューはそんなことは気にしなかっただろうが、なぜか無言でこちら側にいる。
やはり男の身で女の集団に分け入るのは気が引けるのだろうか。
エルバを助けてくれたという〈
モンスターに性別はないが、どうにもエルバに懐いてしまったらしい。
あれは本当に
波音が心地よく、目を閉じると、うとうとしてしまう。
そのうとうとに対抗するのは痛みだった。
筋肉の疲労と皮膚にめり込んだ骨の欠片の痛み。
相手は怪物だったので骨の欠片はヴィックの体内から消え去ったが、すぐすぐに傷が癒えるでもない。
卵軟膏は塗ったが、しばらくは痛みが続くだろう。
女性三人プラス怪物一匹は何やら楽しげに言葉を交わしているが、ヴィックの位置では波音が邪魔して何を喋っているのか聞き取れなかった。
クロエに髪を編んでもらっているエルバが笑っている。
おれとは目も合わせないくせに。
ヴィックはふて腐れる思いがした。
おれはすっごく心配したんだからな。
お前だって最初におれの名前を呼んだじゃないか。
抱きついてきたのはお前だし。
それにしてもエルバの――
「エルバのおっぱい柔らかかったなぁ」
肩に腕を回され、耳元で声がした。
「とか、思ってるのか?」
ヒューがにやつきながら、ヴィックの顔を覗き込んでくる。
何を言われたのか分からず、一瞬だけ呆けて、ヴィックは慌てて言葉を返した。
「違う!違うよ!違うって!」
思った以上に大きな声が出てしまって、エルバたちがこちらに目を向けた。
ヴィックは恥ずかしくてそちらを見ることができない。必死に目を逸らした。
ヒューはまだにやにやと笑っている。
「大丈夫。安心しろって。エルバには言わないでおいてやるよ」
憧れの〈
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます