第7話 ……どういうこと?
「……そこからはがむしゃらだった。
とはいうものの、貴方のご両親からしてみれば困った存在だっただろう。うちの親とそれこそ、数え切れない程に話し合ったと後で聞かされた。
けれど。
もう一度、私の気持ちを伝えたあの日からはいつだって、私の事を気遣ってくれた。まるで実の娘のように接してくれた。私も、実の親のように本音で話した。
ありがたかった。
心の支えだった。
貴方の全てが、私の宝物になった。
そんな貴方のご両親や、呆れ果てたすえに後押しをしてくれたうちの親も、今はもういない。
貴方が目覚める事を、そして私達の未来が幸せである事を願いながら天国へと旅立っていった。
恵まれた人生だったと、心から思う。
本当に幸せな人生を送らせてもらった。
●
「年を取ると涙もろくなって嫌ねえ……貴方の寝室と病室を、私の涙でカビだらけにしないように頑張ってきたつもりなんだけれど」
懸命に生きる貴方の
「さてさて、実は重くて怖くて泣き虫の、私のお話はこれでおしまい。後は最後まで傍にいさせてね? 私が嫌だったら泣いて叫んでもいいのよ? ふふふ」
……違う。
泣いて叫びたいのは私の方だ。
今日という日が来るのを覚悟していたつもりだった。命を振り絞って生きた貴方を、最後まで笑顔で見送る、と決めていた。
なのに。
震えが止まらない。足に力が入らない。気を許すとまた、涙を溢しそうになる。今日だけで、何度やせ我慢の仮面が剝がれてしまった事か。
貴方がこの世界から、旅立とうとしている。
愛する貴方が、私から離れていく。
「…………寂しい。嫌だなあ。辛いなあ……ごめんね、泣き虫で。ごめんね、こんな私で。
しっかりしなさい!
泣くな。
泣くな!
笑顔で。
たくさんの幸せをくれたこの人を笑顔で、見送るんだ。
「……ふう。ごめんなさいね、涙はこれでおしま……えっ? え、え? 貴方? どこ?!」
涙を拭いたのは、ほんの一瞬だったはず。
ねのに、貴方がいない。
ベッドがない。
病室じゃない。
そして。
「……どういうこと?」
教室の窓際で本を読んでいる、私が……いる。
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