第6話 息苦しくさえなるくらいに

「……で、ね? ここからは少し真面目な話をしてもいいかしら。もしかしたら、こんなに重い女だったんだって驚かれたり…………ふふふ、もうとっくにお見通し、かな」


 今日で最後なら。


 貴方が生きて、明日を迎えられないなら。


 私のありのままを全て、伝えておきたい。


「……本当は、怖いの。一年と少し付き合っただけの私が、貴方のご家族に泣いて頭を下げて、傍にいたいって言い続けて。事故の後しばらく、貴方のご家族やうちの親に反対されても、毎日病院に通っていたの。そうしたら、とうとう貴方のお父様に怒られてしまって……」




『この子なら、君の幸せを一番に考えた筈だ! 気持ちは有り難いが、もうやめなさい!』




「貴方が望んでいないって言われたのは、さすがにこたえたわ。そして私の自分勝手な行動に誰もが迷惑をしている。そう思ったら、病院に行けなくなった。どうしたらいいか分からなくって、部屋で考え込んでは泣いてばかりだった」




 でも。

 でも、ね?


 でも。

 でも……。




「友達もろくに作れない、教室の片隅で本を読む事しかできなかった私に……貴方はたくさんの幸せをくれた」




 人を好きになるという事。


 好きだって言ってもらえる喜び。




「貴方だけが、私に教えてくれた」




 肩を寄せ合って見上げる、夜空の美しさ。


 人ごみの中、はぐれないようにと繋いでくれた手の温もり。




「息苦しくさえなるくらいに、幸せすぎる毎日だった」




 明日を、未来を。


 夢を見させてくれた。


 モノクロームの世界を色鮮やかに変えてくれたそんな貴方を。


 貴方との幸せを。


 


「……諦められる訳がなかった」

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