いざ、デート
日曜日、今日は姉のデートの日。
「ねぇ、凛この格好大丈夫かな?」
いつも以上に気合を入れた格好の姉が、また部屋に来る。
「ねえ、その確認何回目?」
「だってだって、はじめてのデートなんだよ!確認は大事だよ!」
「だからって、何回も確認されるこっちの身にもなってくれ!こっちにも、準備があるんだよ!」
俺の格好を見て、納得する姉。
そう、今、自分もメイク中なのだ。
「そうだよね、ごめーん。母さんに確認してもらうよ」
そう言い、部屋から出ていく姉。
姉の背中を見送り、メイクを再開する。
数分後。
いつもと違うメイクのため、大分時間がかかったが、なんとか完成。
姿見に写った自分の姿を確認。
「やべぇ、予想以上に可愛い」
今の自分は金髪のウィッグをつけている。
アニメで、たとえるなら、オタクに優しいギャルという見た目をしている。
オタクに優しいギャルなんていないんだけどね。
これなら、誰が見ても、フェアリーガーデンの凛には見えない。
「それじゃあ、行きますか」
もう出ていった姉を追いかけるため、玄関に向かうと、母さんとすれ違った。
母さんは、不審者にあったようにギョッとし、
「えっあなた、誰?」
「俺だよ、母さん」
「えっ凛?」
「そうだよ」
「ちょっと脅かさないでよ!知らない人が家にいるかと思ったじゃない!」
「ごめんごめん、仕事で必要でさ」
「仕事で必要?なんか、最近女装してるみたいだけど、売春とかはやっちゃだめだよ」
「やらねえよ!!!あんた俺をなんだと思ってるんだ!」
まあ、何はともあれ母親にも気づかれていないということは、この変装は完璧かもしれない。
自信を胸に、家を出る。
待ち合わせ場所は、新宿。
迷路のような駅を抜け、姉を発見。
近くの手頃な柱に、身を隠し様子を伺っていると、姉に手を振る男性が現れた。
「うわ、めっちゃかっこいい」
あれが月さんのお兄さんか。
身長は姉と同じくらいで、男性にしては低いが、とにかく顔がいい。
姉も同じ事を思ったのか、少し見惚れている。
その後、2人は少し談笑し、
「おっ動き出した」
気づかれないように、2人を追いかける。
なにかこうしていると、浮気調査をしている探偵みたいだ。
「うん?あれは...」
同じく、2人を追いかけている女の子?が、いる。
探偵が被っていそうな帽子と、トレンチコートにサングラスという出で立ち。
自分がイメージする探偵そのものという格好をしている。
というか、これってもしかして...。
「月さん何してるの?」
「ひゃっ」
驚いて、振り向く月さん。
急に声をかけたとはいえ、すごい驚きようだ。
「えと...誰?」
「凛だよ!まあ、この格好してるから気付けないのも無理ないけど...」
女装している時とそうでない時は、基本、黒髪だからね。
それに、身内にも気づかれないクオリティだからしょうがない。
「あっ、凛さん。全然気づかなかった。何してるの」
「月さんのお兄さんと、姉ちゃんのデートの尾行」
「えぇ...」
少し引いた顔をされた。
月さんって、そういう顔をするんだ...。
「いや、姉ちゃんに頼まれたんですよ!デートのバックアップしてくれって。そういう月さんだって、尾行してるじゃないですか!」
「私の場合は、太陽がやらかさないように見張ってるの!」
月さんのお兄さんって太陽って、名前なんだ。
「月さん、お兄さんのことベタ褒めしてたじゃないですか!やらかすもなにもないですよ!」
「そっそういえば、そうだね。まあ、念の為にね」
「あっ、ていうか2人とももう遠くに居ますよ。追いかけないと」
「やばっ、見失っちゃう」
急いで、姉たちを追いかけた。
最初の目的地はカフェで、大学のリア充たちのおすすめらしい。
俺が提案した、デートコースはことごとく却下された。
なにが、童貞丸出しのデートコースだ。
映画館でデートとか定番だろうが。
駅から歩いて、15分ほどでカフェに着いた。
リア充がおすすめする店なだけあり、外装がめちゃくちゃオシャレ。
そのカフェは女性かカップル限定らしく、男性だけでは入店できない。
外からみた感じ、中の客はほとんど女性だ。
それもあったので、今日は女装をして外に出ているのだ。
フェアリーガーデンでしている女装は、太陽さんが見ている可能性があるので、あえてギャル風にしている。
姉たちが入店してから、数分遅れで入店。
「いらっしゃいませ」
「予約していた井ノ崎です」
「井ノ崎様ですね。えっと、こちらの方はお連れ様でしょうか?」
「すみません、2人に増えちゃったんですけど大丈夫でしょうか?」
「少々お待ち下さい」
確認をしに、奥に引っ込んでいく店員。
「ごめんね。急に私も入ることになっちゃって」
「全然いいですよ、月さんにはいつもお世話になってるし」
今日の月さんは、いつもより口調がくだけている。
最近、仲良くなったから、敬語もやめてくれたのかな?ちょっと嬉しい。
雑談をしていると、店員が戻ってきた。
「大丈夫です。席にご案内いたします」
入れないかもしれないという心配は、杞憂に終わったようだ。
席に案内され、メニューを開く。
値段はファミレスと比べると割高だが、どれも美味しそうだ。
「うわ、どれも目移りしちゃうな。うわっこのケーキめちゃくちゃ美味そう!」
こんなに、美味そうなのに、男性だけでは食えないのか...。
不公平だ。男女不平等だ。
それなら、私生活もどんどん女装して、女性限定のお店に行こうかな…。
なんて考えが頭によぎるが、月さんの声で冷静になる。
「ねえ、凛さん。目的忘れてない」
「はっそうだった」
ジト目を向ける月さん。
注文を一旦中断し、通話を開始する。
すると、少し離れた場所に座っている姉も席を立ち、トイレに入っていった。
『もしもし』
『おっ姉ちゃん、着いたよ』
『了解、そしたらアシスト頼むよ』
『おっけー』
姉が席に戻って来る。
通話は繋がったままだ。
作戦開始。
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