第33話 この世を去った前世のわたし
わたしの病状はあっという間に進行していき、危篤状態になった。
その為、王都から遠く離れたブリュフィス侯爵家の領地の屋敷にいるマドヴィリーヌさんを今から呼んだとしても、間に合いそうになかった。
わたしは危篤になる直前の時点で、マドヴィリーヌさんに会えない可能性が強いと思っていた。
もう一度話がしたかったのだけれど、無理なようだった。
そこで、わたしはマドヴィリーヌさんに手紙を書こうと思った。
わたしは、既に苦しい状態になってきていたものの、
「あなたはわたしにとって、とても素敵な友達でした。幼い頃からの付き合いでしたが、大人になってからも、会う回数は減りましたが、付き合い続けることができて幸せでした。もし、来世というものがあるのであれば、また友達になりたいです」
という内容の手紙を書いた。
マドヴィリーヌさんとは、来世でも友達付き合いをしたいと強く願っていた。
その後、危篤になったわたしは、苦しさに耐えながらグラスドール殿下に、
「グラスドール殿下、もうわたしは持たないようでございます。わたしがこの世を去ったら、わたしのことは忘れて、新しい王妃を迎い入れてくださいませ。それがわたしのお願いでございます」
と言った。
それに対し、グラスドール殿下は、
「何を言うんだ、レリアフルヴィ。わたしにはお前しかいない。お前しか愛する人はいないんだ! そんな弱気なことは言わず、回復してくれ。お願いだ。わたしはおまえがいなければ、それこそ生きていくことはできないんだ!」
と涙を流しながらわたしに言った。
「その言葉だけで十分です。ありがとうございます。でも、わたしはグラスドール殿下に幸せになっていただきたいのです。ですから。新しい王妃を迎い入れていただきことをお願いしているんでございます」
「レリアフルヴィ、わたしを置いたままこの世を去らないでくれ、生きてくれ。わたしの幸せは、お前と一緒に暮らすこと以外にはありえないのだ! そうだ、レリアフルヴィ。わたしと約束してくれ。お前がこの世を去ることなど想像はしたくないんだ。でも、もし、この世を去ることになるのなら、来世でも今世と同じくわたしと結婚してほしい。お前とわたしの結婚の約束をここでしておきたいんだ」
グラスドール殿下は、わたしと来世での結婚の約束をしたいと言っている。
来世というものがあるとは、今までは思っていなかった。
しかし、今は存在してほしいと思うようになっている。
「グラスドール殿下。来世での結婚の約束をしていただきまして、ありがとうございます。光栄なことでございます。もちろんお受けいたします。うれしいです。グラスドール殿下。わたしはグラスドール殿下に愛されて、幸せものでした」
苦しさの中、何とか言うことができた。
この言葉がわたしの前世における最後の言葉だった。
この言葉を言った後、わたしがこの世を去ろうとしている時、グラスドール殿下は、
「レリアフルヴィよ、来世での結婚の約束を受け入れてくれてありがとう。うれしい。来世の存在を信じていない人は多いが、わたしはその存在を信じたい。そして、来世でもお前と絶対に結婚するんだ。でも、わたしは、この世でお前をもっと愛したかった。この程度では全然愛し足りないと思っている。ごめん。申し訳ない。今度生まれ変わった時は、お前のことをもっと愛していきたい。一生愛していきたい。それほどわたしはお前が大好きなんだ!」
と涙声で叫んでいた。
その声はわたしに届いていたのだった……。
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