第32話 結婚した前世のわたし

 レリアフルヴィは舞踏会で、グラスドール殿下とは初対面だったのにもかかわらず、一目惚れをされたのだ。


 今世と同じ状況だった。


 それからは、今世のオーギュドステファ殿下のように、会う度に熱い想いを伝えてくる。


 こちらが恥ずかしくなる言葉を。それこそたくさん言ってくるのだ。


 レリアフルヴィ は。もともとオーギュドステファ殿下のような男性がタイプだったので、グラスドール殿下に熱い想いを伝えられ続けたことによって、オーギュドステファ殿下のことが大好きになっていった。


 そして、グラスドール殿下とレリアフルヴィは婚約し、結婚へと向かう。


 グラスドール殿下とレリアフルヴィの結婚式は盛大に行われた。


 既に前世のグレゴフィリップ殿下であるボードヴィノール王国ブリュフィス侯爵家令息のグレゴファーヌ様と結婚をしていたマドヴィリーヌさんもわたしたちの結婚式に出席し、祝福してくれた。


 こうして、グラスドール殿下とレリアフルヴィは結婚した。


 つまり、前世でオーギュドステファ殿下とわたしは結婚していたのだ。


 グラスドール殿下は、わたしのことを溺愛した。


 婚約した後、わたしはグラスドール殿下に、


「わがままで傲慢な態度をとるといったところは、本来のグラスドール殿下の姿ではないと思います。今までは、王妃殿下やその支持勢力の対抗上、そういう態度を取ってきたと思いますが、そろそろ心やさしい本来のグラスドール殿下の姿に戻るべきだと思います。これからはもうグラスドール殿下お一人ではありません。わたしがグラスドール殿下のそばについて支えてきます。もちろん、ただ心やさしいだけでは難しいことは理解しておりますので、気品を持った心やさしい態度をとることが大切だと思っております。そこで、グラスドール殿下とわたしで周囲に対して気品を持った心やさしい態度を取っていけば、自然とグラスドール殿下のことを支持していくようになります」


 と言った。


 グラスドール殿下は、わたしの言うことを心では理解できていた。


 とはいっても、今までの態度を変えることは、なかなか難しいこと。


 それでもグラスドール殿下は自分の態度を変える努力を一生懸命行っていく。


 そして、その努力の結果、グラスドール殿下は、今までとは違い、周囲に対しては、気品を持った心やさしい態度をとるようになっていき、結婚してからは、さらに心やさしい態度をとるようになっていった。


 というよりも、それがもともとのグラスドール殿下、そして、オーギュドステファ殿下の姿だったと言えるのだけれど。


 その結果、グラスドール殿下を支持する勢力が王妃殿下の実の子供を支持する勢力を圧倒していき、グラスドール殿下が王太子の地位を盤石とし、次期国王の座を確定せせることになった。


 わたしもグラスドール殿下のことが大好きだった。


 愛していた。


 わたしたちが婚約するまでは、わたしのことを病的に好きな貴族令息がいて、結構大変な思いをしたこともあったのだけれど、グラスドール殿下がわたしを救ってくれた。


 そのことには心から感謝している。


 その時、グラスドール殿下が言った、


「レリアフルヴィはわたしのもの! わたしはレリアフルヴィのもの!」


 という言葉は、わたしにとって、とてもうれしいものだった。


 グラスドール殿下もレリアフルヴィも、王国民の幸せを第一に思う政治を行おうと思い、改革を進めていた。


 やりがいがあった。


 そのわたしたちの改革が軌道に乗り始めていたことはうれしかった。


 結婚して二年目の時点では、わたしたちの間に子供はいなかったものの、やがては子供を作り、育てていこうと思っていた。


 そして、年老いてからもずっとグラスドール殿下と一緒にすごし、子や孫たちに囲まれながら幸せに暮らしていけるものと信じていたのだ。


 それは十分実現可能だと思われた。


 しかし……。


 わたしは、子供を作る前に、病に倒れてしまった。

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