第28話 わたしのライバル

 モニクレットさんは一旦言葉を切った後、さらに続ける。


「悔しいけれど、さすがのわたしも根負けしてしまいそうになってしまったわ。まあ、ルデナティーヌさん。あなたの性格は良さそうだというところは、悔しいけど認めてあげるわ」


 と悔しさをにじませながら、わたしに言った。


 でも、わたしは、その悔しさには反応せず、


「モニクレットさん、わたしのことを褒めていただいてありがとうございます。わたしはモニクレットさんが言ってくる嫌味と言われるものについては、特に気にしていません。これからは仲良くしていただけるとうれしいですわ」


 と微笑みながら応えた。


 今までのように、モニクレットさんから無視されることは決して好きではない。


 せっかく縁あって、クラスが一緒になったのだから、モニクレットさんとも仲良くしていきたいのはわたしの本音だ。


「ルデナティーヌさんは、相変わらず生意気な人だわ。あなたには以前も言ったけど、あなたほどの礼儀を知らない人間は、この世にはいないと思いますわね。でも、まあいいわ。もうわたしの言いたいことは言ったし、さっきも言ったことではあるけれど、あなたの性格が良さそうなところも、悔しくて残念なところだけど、認識せざるを得ないわ。そして、マドレアリーヌさんとルデナティーヌさん、いい友達どうしだよね」


「褒めてくれてありがとう」


 マドレアリーヌさんがそう言い。わたしも、


「褒めていただいてありがとうございます」


 と言うと、モニクレットさんは、


「褒めているわけではないわ。誤解しないでね」


 と苦笑いをしながら応えた。


 でもそういいつつも、どこかわたしたちを褒めてくれているような気がした。


 そして、モニクレットさんは。


「それでは帰ることにいたしますわ。ごきげんよう」


 と言うと、高笑いをしながら去って行った。


 残されたわたしたち。


 マドレアリーヌさんは、


「モニクレットさんは、オーギュドステファ殿下のことがだんだん好きになってきているのよね。舞踏会前までは、むしろ嫌っていたように思えたけれど、変化してきたということね。これはルデナティーヌさんにとって、オーギュドステファ殿下についてのライバルの登場と言えるのかもしれないわね」


 と言った後、いたずらっぽく笑った。


「わたしのライバルですか?」


「ルデナティーヌさんの方が今のところすべてで上回っているけれど、性格が改善してきたら手強い相手になると思うの」


「そうでしょうね」


 マドレアリーヌさんの言う通りだと思う。


 これからはモニクレットさんのことも意識はしておく必要がありそうだ。


「まあ、でも今のモニクレットさんは、ライバルがどうのこうのより、オーギュドステファ殿下との仲を進展させることが大切だと思うわ」


「そうですね。また次の休日に、オーギュドステファ殿下とのお茶会が開催されますし……」


「モニクレットさんのことは心の片隅にとりあえず置いておいて、次のお茶会で仲をより一層進展させることに集中すべきだわ。まあ、わたしが言うまでもなく、ルデナティーヌさんは十分認識していると思うけれど」


「ありがとうございます。わたしとしては、できればこのお茶会の時までに、もしくはお茶会の時に、オーギュドステファ殿下との約束のことを思い出せたらいいなあ、と思っています」


「とにかくあせってはいけないわ。オーギュドステファ殿下との約束のことは、『思い出せたら思い出す』ということが大切なことだとわたしは思っているの。それは改めて言っておくね」


「ご配慮ありがとうございます。あせらないように十分気をつけます」


「ルデナティーヌさんなら、きっと、オーギュドステファ殿下と一緒に幸せになれると思っていますわ」


「ありがとうございます。わたしはマドレアリーヌさんのご期待に応えられることができますように、一生懸命努力をいたします」


 わたしはそう言った後、マドレアリーヌさんに頭を下げた。

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