第27話 ライバルへの言葉

 マドレアリーヌさんとモニクレットのやり取りは続く。


「オーギュドステファ殿下の好きな人についてはノーコメントにするわ。ただ、モニクレットさんは、オーギュドステファ殿下の素敵なところにだんだん気づきつつあるのよね」


「そうよ。すごいでしょう」


「それがわかっているのなら、あえて言わせていただきましょう。今のままのあなたでは、いずれにしてもオーギュドステファ殿下の心を奪うことはできないでしょう。少なくともわがままで傲慢なところは直していく必要があります。オーギュドステファ殿下も表面上は、わがままで、傲慢な態度を取っておりますが、それはわざとそうした態度を取っているということに、モニクレットさんも気づいておられるわけでしょう?」


「もちろん気がついておりますわ」


「だとしたら、モニクレットさん自身、そうしたことに気をつけるべきだと思います。これはオーギュドステファ殿下がどうのこうのではなく、これからモニクレットさんが生きていく上でも、これから素敵な人と出会っていく上でも大切なことだと思っていますわ」


「なかなか手厳しいことを言うわね」


「モニクレットさんがブルザシャルー公爵家という爵位の高い貴族の出身で、才色兼備な方であることは、十分理解されていますので、後は性格だと思っています。今までのようなわがままなところや傲慢な態度を取らないようにしていけば、オーギュドステファ殿下はもう好きな人がいるかもしれないので別としなければならないのかもしれませんが、それはともかくとして、良縁には恵まれていくとわたしは思っているのです」


「なかなかうまいことを言う。マドレアリーヌさんはたいしたものだわ」


 そう言いながらも心は動かされているようだ。


「そこで、今日とはいわないのですし、すぐにでも言わないのですが、ここにいるルデナティーヌさんとの関係も改善してもらえると、わたしとしてもうれしいと思っているのですわ」


 マドレアリーヌさんがそう言うと、モニクレットさんもわたしも驚いた。


 マドレアリーヌさんは、わたしとモニクレットさんの関係改善にも自分の考えを結び付けてくれた。


 すごいとしかいいようがない。


 モニクレットさんは少し考えた後、


「ルデナティーヌさんね……。まあ、生意気だけど、マドレアリーヌさんがそう言うのなら、少しぐらい考慮してあげてもいいでしょうね」


 と言った。


 それに対して、わたしは、


「わたしはモニクレットさんを普通のクラスメイトだと思っていますので、こちらからは特に何も言うことはありません」


 と応えた。


 まあ、これで少しずつモニクレットさんとの関係改善を図っていくことはできそうだ。


 モニクレットさんは、


「今日の一番の目的は、マドレアリーヌさんがオーギュドステファ殿下と恋人どうしになっていないことを確認することだった。オーギュドステファ殿下が誰のことが好きなのか、ということは確認できなかったけれど、オーギュドステファ殿下がどういう方を好きタイプとしているのかということは把握できた気がする。お礼の言葉はいうつもりはなかったけれど、一応は言っておくことにするわ。でも、いい気にはならないでね」


 と言ったのに対し、マドレアリーヌさんは、


「ありがとう、モニクレットさん」


 と言って微笑むのだった。


 さすが、最後に嫌味を言われても平然としている。


 モニクレットさんは、続けて、


「それから、ルデナティーヌさん。あなたは心がとても強いわね、わたしの嫌味に対して平然としていれるのは、マドレアリーヌさんとあなただけ。特にルデナティーヌさんは。今まででも最大級の嫌味を言ったはずなのに、効果がないので、あきれてしまったの」


 と言った。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る