第23話 ライバル登場

 その翌日の昼休み。


 わたしとマドレアリーヌさんはレストランで、いつものように一緒に昼食をとっていた。


 そして、昨日のお茶会について、マドレアリーヌさんに話をしていた。


 わたしは、お茶会の概略を話した後。


「婚約破棄のことを乗り越えられなかったこと」


 について、マドレアリーヌさんに詫びた。


「これを乗り越えられていれば、オーギュドステファ殿下のことを『理想の人』『運命の人』と認識することができたのに、と思います。どうしても、この時受けた心の傷がうずいてしまって……。せっかくアドバイスをもらいながら、うまくいきませんでした。申し訳ありません」


 と言ってわたしは謝ったのだが、そんなわたしにマドレアリーヌさんは、


「それは気にすることではないと思う。時間をかけて心を癒していけばいい。あせることなないと思うわ」


 とやさしく応えてくれた。


 マドレアリーヌさんとわたしはそのまま話を続けていた。


 すると、わたしたちに向かって、


「ごきげんよう」


 と言う声が聞こえてきた。


 それは聞いたことのある声だった。


 声のした方向に顔を向けると、そこには……。


 金髪碧眼の少女。


 そういうところはわたしも同じなのだけれど、より髪が長く、ロールされている女性生徒。


 ブルザシャルー公爵家令嬢モニクレットさんだ。


 わたしのクラスでは、マドレアリーヌさんと同じく公爵家の出身で、マドレアリーヌさんとともに一番爵位が高い。


 マドレアリーヌさんをライバルとし、いつも対抗意識を燃やしている。


 取り巻きを三人従え、取り巻きのいないマドレアリーヌさんに対して、その力を誇示しようとしていた。


 ただ、マドレアリーヌさんは、モニクレットさんのことを相手にしていない。


 それがまた悔しいようで、自分よりも爵位の低い人たちに対して、イジメとまではいかないが、嫌味を言うことにより、発散しているようだ。


 もちろん嫌味を言われるのが嫌な生徒も多いので、生徒の間の評判はよくはない。


 ただ、爵位が一番高いので、面と向かって反撃することはなかなかできるのではない。


 そして、クラスの特定の個人を攻撃するのではなく、


「礼儀作法がなっていない」


 と思われた人たちに対して、その都度思いついたように嫌味を言い、高笑いをする。


 その点でも反撃することは難しい。


 クラスの中で、礼儀作法が一番しっかりしているのは、マドレアリーヌさんとモニクレットさんだからだ。


 とはいうものの、マドレアリーヌさんと違って、モニクレットさんのいう礼儀作法は、一般的なものとは違う。


 モニクレットさんを第一に思っていくのが礼儀作法の根幹だと言っている。


 わたしには到底ついていけない話だ。


 わたしは、ボドルノール王国の学校に通っていた経験から、こうした生徒がクラスにいることは想定していた。


 そして、今のわたしは男爵家令嬢。


 わたしが婚約破棄され、ブルトール侯爵家から追放されたことは知らないだろう。


 でも、男爵家令嬢というだけで、十分嫌味を言われる対象になってしまうことは、十分想定された。


 実際、初めてこのクラスに来た時は、


「こんな礼儀知らずの人が、なんでわたしたちのクラスに来たのかしら? 全くもってどうしょうもない人だわ」


 という嫌味を言われ、高笑いをされてしまった。


 わたしはきちんとあいさつはしたつもりだったのだけれど、その時に、


「モニクレット様、あなたのような美しくて素敵な方とこのクラスで一緒になれて、これほどうれしいことはございません。これからの学校生活、モニクレット様のことを第一に思っていきますので、どうかよろしくお願いいたします」


 というあいさつをするべきだと、モニクレットさんや、その取り巻きの人たちに言われたのだ。


 そして、


「そうすることが、礼儀作法をわきまえた人間だということよ」


 と言ってくる。


 わたしが侯爵家令嬢であれば、絶対に言われないことだと思う。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る