第22話 わたしに対する愛の言葉
わたしは、オーギュドステファ殿下に対し、
「お気づかいありがとうございます。わたしは、オーギュドステファ殿下のお気持ちをだんだん理解してきました。これだけわたしのことを好きになっていただいたことは、ありがたいことでございますし、うれしいことございます。そして、オーギュドステファ殿下のことが好きになってきました。ただ、申し訳ないことだと思っておりますが、もう少しだけお時間をいただきたいと思います、昔、オーギュドステファ殿下と約束をしたことも何とか思い出そうと思っております。それがオーギュドステファ殿下との仲を進めていくことにもつながると思っておりますので、申し訳ありませんが、よろしくお願いいたします」
と言った後、頭を下げた。
「うん。わたしとの仲について、真剣に考えてくれるところ、これがまたいいのだ。わたしは、ますますお前のことが好きになったぞ。わたしがお前のことを思っているぐらい、お前がわたしのことを好きになってくれるとうれしいんだが、まあ、それは先のことにとっておくことにしょう。それにしても、ここまでわたし好みの女性になってくれているというのは。素敵だというしかない。ありがたいことだ」
オーギュドステファ殿下はそう言うと、今までになく爽やかに笑った。
わたしの心も爽やかにしていく笑いだ。
オーギュドステファ殿下は、こういう笑い方もできることをわたしは認識することができた。
素敵な笑い方だ。
そして、
「ルデナティーヌよ。お前はわたしにとっての『理想の人』『運命の人』なのだ。でも、お前の方はわたしのことをそう思うことができないだろう。それは、婚約を破棄された経験で心を痛めているからだと思う、わたしはお前にそう認識してもらうまで待つよ」
とまた爽やかに笑いながら言った。
うれしい言葉だ。
オーギュドステファ殿下は、わたしのことを「理想の人:「運命の人」という認識してもらっているのだけれど、わたしもこうして今日、オーギュドステファ殿下の「愛の言葉」を聞いている内に、少しずつではあるものの、オーギュドステファ殿下が「理想の人」「運命の人」ではないかと思う気持ちが芽生え始めていた。
でも、まだ婚約破棄された時の心の傷がうずいて、そのような認識をするのを妨げてしまう。
わたしは、
「わたしのようなものの為に、お言葉をいただきまして、ありがとうございます。わたしとしても、婚約破棄をされた時の心の傷を癒していき、それを乗り越えていけば、オーギュドステファ殿下がおっしゃる認識ができるかもしれないと思っております」
と応えた。
今はそう言うのが精一杯というところだ。
「とにかく無理はしないでいい。わたしはお前をいつでも待っているよ」
オーギュドステファ殿下はそう言うと、わたしをいたわるように微笑んだ。
その後も、オーギュドステファ殿下のわたしに対する「愛の言葉」は続いた。
言われ続けていく内に、だんだん婚約破棄の時の心の傷が癒えていくような感じがする。
オーギュドステファ殿下もそのことを考慮してくれているのだろう。
やがて、オーギュドステファ殿下は、
「では、そろそろ今日のところはお開きにするかな」
と言った。
いつの間にか、もう夕方になっていた。
かなりの長時間、わたしはオーギュドステファ殿下のわたしに対する「愛の言葉」を聞いていたことになる。
正直なところ、もっと聞いていたい気持ちはあった。
最初は、歯の浮くような言葉だと思って、少し距離をおきたくなったこともあった。
しかし、今は心地良い言葉に変わってきている。
オーギュドステファ殿下の声が美声というところもあると思う。
「本日は、お招きいただき、ありがとうございます」
「満足はしていただけたかな?」
「最初は戸惑いもありましたが、楽しい時間を過ごすことができました。紅茶とお菓子もおいしかったです」
わたしは、最初の内は、紅茶を飲む気がおきなかったし、お菓子も食べる気がおきなかった。
しかし、次第に紅茶を飲み、お菓子を食べながらオーギュドステファ殿下の「愛の言葉」を聞く態勢になることができた。
「わたしの方も愛するルデナティーヌと二人きりの時間を過ごすことができて、楽しかった。これほど楽しかったことはない。後は、お前がわたしの愛を受け入れて、恋人どうしになれればいいと思っている。でも、それはあせらないことにするよ。その日が来るまで、いや、その日が来てからも、わたしはお前に対して、「愛の言葉」を伝え続けることにするよ。好きだ、大好きだ、ルデナティーヌ!」
オーギュドステファ殿下はそう言うと、また爽やかに笑った。
わたしは、今日、十何度も襲われている恥ずかしさに、また襲われた。
うれしいことなのだけれど……。
やっぱり恥ずかしくなってくる。
オーギュドステファ殿下は、
「また来週、お茶会を開催するよ。来てくれるね。そして、今度は、昔のことを思い出してもらえるといいね。そして、恋人どうしにまで進展できるといいなと思っているんだ」
と言った。
それに対して、わたしは、
「お誘いいただき、ありがとうございます。また来週、お伺いさせていただきたいと思いますので、よろしくお願いいたします。そして、そのようなもったいないお言葉を言っていただきまして、ありがとうございます」
と恥ずかしさを何とか抑えながら、そう応えるのだった。
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