第15話 運命の人
マドレアリーヌさんは話を続けていく。
「ただ、わたしに対しては、『本当は、お前が運命の人だったらよかったと思ったこともあるんだ。でも、お前もそうだと思うが、わたしの方も結局、お前のことを運命の人だと認識することはできなかった。それは残念なことだとは思うが、それこそそれは運命だということなんだろうな』と言った後、『わたしたちは幼馴染。お互い、これからは疎遠になっていくだろうが、それでも幼馴染としてずっと仲良くしていきたいと思っている』と言ってくれたの。もちろんわたしは、『わたしも幼馴染としてずっと仲良くしていきたいです』と応えたわ」
「ということは、それで仲が悪くなったということはないのですね」
「そうよ。これからも幼馴染として仲良くしていけるというのは、わたしとってもうれしいことだわ」
わたしは、
「教えていただきありがとうございました」
と言った後、頭を下げた。
オーギュドステファ殿下とこれからもずっと仲良くしていくという話を聞いて、わたしはホッとしていた。
「ルデナティーヌさんの方は、オーギュドステファ殿下のことを『運命の人』だと認識はしなかったの?」
わたしはマドレアリーヌさんにそう言われて驚いた。
「『運命の人』ですか?」
「オーギュドステファ殿下の方は、舞踏会で始めて会った時、すぐにルデナティーヌさんのことを『運命の人』だと認識したのだと思う。ルデナティーヌさんに対して言った、『付き合うことになったんだ!』という言葉は。ただ強引なことというだけではなくて。そこにはオーギュドステファ殿下にとってルデナティーヌさんは、『運命の人』であるという認識が含まれているのだと思う。今まで、わたしはオーギュドステファ殿下の言葉にそういう意識が入っているかどうかまで、それほど考えてはいなかったのだけれど。わたしが自分で『運命の人』の話をしていく内に、オーギュドステファ殿下の想いにそのことが含まれていることを認識するようになったの」
「そのへんは、わたしはまだまだ認識することはできないでいます。また、わたしの方は、オーギュドステファ殿下のことを『運命の人』といところまでは認識することができていません。わたしは、初めてお話をさせていただいた時に。この話も話をさせていただきましたが。婚約破棄をされたことがある人間です。残念ながら、まだ、その心の痛手からは立ち直りきれていません。オーギュドステファ殿下が『運命の人』どうかはわかりませんが、もしそうだとしても。舞踏会の時も今も、その心の痛手がじゃまをして、どちらにしても『運命の人』という認識はできないと思っています」
「ルデナティーヌさんの婚約破棄の話を聞いた時、なんて苦労された方なんだろうと思いました。今のルデナティーヌさんの気持ちは、改めて理解をしたいと思います。恐らくは、オーギュドステファ殿下のことをその婚約破棄をした男性と重ね合わせてしまっているところはあるのでしょう」
わたしはマドレアリーヌさんに言われて、確かにそういうところはあったかもしれないと思った。
「マドレアリーヌさんの言う通りだと思います」
「だとすれば、オーギュドステファ殿下に対する認識を変えていけばいいわけね」
「それはそうだと思いますが……」
「先程も言った通り、オーギュドステファ殿下は、『運命の人』と出会いたいと言っていた。それが、女性に声をかけまくるというところにつながっていたのね。でも、ルデナティーヌさんを『運命の人』と認識したということであれば、もうそうしたことは止めることになると思うの。そして、これからは、ルデナティーヌさん一筋になるとわたしは思っている。そして、その愛はものすごいものになるかもしれませんよ。溺愛ということになると思うわ」
「そうなのでしょうか?」
「幼い頃からオーギュドステファ殿下のことを知っているわたし。まず間違いはないと思っていいわよ。まずは、今までのつらかった思い出を一旦心の奥にしまい、オーギュドステファ殿下のことを純粋に考えていく。これが大切なところだと思うわ」
そう言うと、マドレアリーヌさんは微笑んだ。
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