第12話 幼馴染
マドレアリーヌさんは、わたしに、
「それはそうだとも言えるわね。王妃殿下を始めとしたオーギュドステファ殿下の反対勢力を油断させるには、効果的なことだとわたしも思うわ。ただ、それだけではないと思っているの。どうやらオーギュドステファ殿下は、理想の人を探しているように思うわ」
と言った。
「理想の人ですか?」
「まずルデナティーヌさんに聞きたいと思うのだけれど、オーギュドステファ殿下は、声をかけた女性とその後付き合っていると思う?」
「普通に考えるとそう思います。それで、飽きてしまうとすぐ次の女性に移ってしまうということではないかと思っています」
わたしがそう言うと、マドレアリーヌさんは少し困った様子で、
「そこのところもあるわよね。オーギュドステファ殿下が誤解されて、悪い印象を会立ててしまっているところはね」
と言った。
「では実際は違うということでしょうか?」
「そうなの。オーギュドステファ殿下は、女性に声をかけまくってはいるのだけれど、実際に付き合った女性は、誰もいないの」
「そうなんですか?」
わたしは驚いた。
「驚くのも無理はないと思う。周囲の人々は、『女性に声をかけた』という点だけに注目して、実際の付き合っているかどうかについては、大して注目していないということなの」
「でも、この間、舞踏会でモニクレットさんと踊っていましたが、あの方とも付き合ってはいないということなのですか?」
「モニクレットさんはオーギュドステファ殿下に強いアプローチをしていて、オーギュドステファ殿下としても応えざるをえないから一緒に踊ったのだと思うわ」
「そうなのですか」
「その意味で、オーギュドステファ殿下がルデナティーヌさんに『付き合うことになったのだ!』と言ったのは、今までにないことだと思う。それだけオーギュドステファ殿下がルデナティーヌさんのことを気に入り、好きになったのだと思うわ」
「これもなかなか信じられない話ではあるのですが……」
わたしはここで、オーギュドステファ殿下とマドレアリーヌさんの関係について聞いてみようと思った。
恐らくは怒られないと思う。
「マドレアリーヌさん、申し訳ないのですが、一つ聞いてもよろしいでしょうか?」
「なんでしょう?」
「わたしからすると、オーギュドステファ殿下とマドレアリーヌさんは幼馴染ですし、信頼もされているようですから、わたしよりもマドレアリーヌさんの方がオーギュドステファ殿下にふさわしい方だと思うのですが……。もし、お気にさわることでしたら申し訳ありません」
わたしはそう言って頭を下げた。
するとマドレアリーヌさんは。
「頭を上げてください。ルデナティーヌさんからすれば、当然思うことだとわたしは思うわ」
とやさしく言った。
わたしが頭を上げると、マドレアリーヌさんは、
「それではオーギュドステファ殿下とわたしの関係についてお話をいたしましょう」
と言った。
「わたしは、ルデナティーヌさんには以前から話をしているように。オーギュドステファ殿下の幼馴染で、五歳の時まではよく遊んでいたの。その頃のことは、オーギュドステファ殿下の方はわからないけど。わたしにとっては楽しかった記憶として残っているわ」
「その頃のオーギュドステファ殿下はどうだったのでしょうか?」
「その頃は。今のように強引で傲慢な態度をとることはなかったの。でも、前の王妃殿下がこの世を去って。今の王妃殿下が来てからは、今のよう性格に変わってしまったわ」
「そうだったんですね」
「ただ、わたしに対しての対応だけは別だったの。その後会う機会は減ったのだけれど。それでもオーギュドステファ殿下は、わたしをお茶会などでわたしと会ってくれた。ただ、オーギュドステファ殿下とわたしが成長するにつれて、わたしは王妃殿下が、オーギュドステファ殿下とわたしが会うことを認めなくなるのでは、と思うようになってきたの。わたしがオーギュドステファ殿下の味方になることにより、オーギュドステファ殿下の支持勢力が拡大することを恐れるのでは、と思うようになってきたから。でも、王妃殿下は特に断ることはなかった。わたしがオーギュドステファ殿下の幼馴染であったということと、オーギュドステファ殿下がだんだん嫌われるようになり、オーギュドステファ殿下の反対勢力が優勢になってきたので、わたしの存在についてはあまり考慮する必要がなくなったことによるもののようなの」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます