第11話 オーギュドステファ殿下の意志
マドレアリーヌさんは、わたしに、
「ルデナティーヌさんもそう思うのね。でも、オーギュドステファ殿下についての話はこれだけではないのよ」
と言った。
「まだ続くのですか?」
「今まで聞いていて、うんざりしてきたかもしれないけど、オーギュドステファ殿下のことを理解する為だから、我慢してね」
「わかりました」
せっかく話をしてもらっているのだ。
我慢して聞かなければならない。
「では話を続けるね。オーギュドステファ殿下は、そういった旅先でも、女性に声をかけまくっているという話。女性に声をかけまくるというのは、通常、舞踏会とか王宮の中やその周辺でのことを思い浮べると思うのだけれど、オーギュドステファ殿下はそれだけではなく、王国内をまわっている先でも声をかけまくっているということなの。ここまで聞くと、オーギュドステファ殿下への印象は良くなるどころか悪くなるわよね」
「わたしもそう思います。マドレアリーヌさんの話を聞く限りですと、『わたしの愛がほしい』と思っている方の行動とは思えません」
「でも……」
マドレアリーヌさんは一旦言葉を切り、心を整えた後、続ける。
「これはオーギュドステファ殿下がある意志を持って行っているようにわたしは思うの」
「どういうことなのでしょう?」
マドレアリーヌさんは何を言おうとしているのだろうか?
マドレアリーヌさんは、
「まず、王国内をまわっているのは、王国内の実際の状況を自分でつかもうとしているからだと思うの。王室や貴族の人たち大半は認識していないのだけれど、オーギュドステファ殿下は、そう言った遊びと認識されることの他に、訪問先のまちや村の人たちと身分の差などは関係なく、いろいろな話をしているということをわたしは聞いているの。わたしも王室の人間ではないから詳しいことはわからないのだけれど、この王国は十数年前から財政が赤字になっていて、赤字幅を何とか減らす為に、増税を繰り返しているという話は聞いていて、それで庶民の暮らしが苦しくなっているということも聞いているの。そうした王国の状況を立て直す為、自分で王国内の状況を把握し、これから自分が国王として即位をした時に約立てようとしているのではないかと思っているわ」
と言った。
わたしは、この話を聞いて驚いた。
全く思ったことのない話だったからだ。
「どう? ルデナティーヌさんにとってもこれは思ったことのない話でしょう?」
「申し訳ないのですが、すぐには信じがたい話です」
「そう思うのも無理はないわね」
「わたしがよくわからないのは、なぜきちんとした服装で行動しないのかということです。きちんとした服装で毅然と行動すれば、まだ批判の方も少しはやわらぎそうな気がするのですが……」
「そこは恐らくは王妃殿下とその反対勢力の油断を誘うことを考えているのだと思うわ。今のオーギュドステファ殿下は四面楚歌の状態。少しでも反対勢力に油断をさせて、主導権を握ろうとしているのだと思うわ」
「なかなか信じられない話ではあるのですが、そうだとすると、オーギュドステファ殿下はすごい方ですね」
「まあ、わたしが推測しているところもあるけど、ある程度はオーギュドステファ殿下から聞いている話ではあるのよ。こういうところは幼馴染の特権というところね」
「オーギュドステファ殿下はそれだけマドレアリーヌさんのことを信頼されているのだと思います」
「そうだとうれしいんだけれどね」
マドレアリーヌさんはそう言うと、微笑んだ。
しかし、これを聞いて、わたしは、
「マドレアリーヌさんはオーギュドステファ殿下の幼馴染で、今でも信頼されているようなのに、なぜ婚約者として選ばれていないんだろう……」
と思わざるをえなかった。
そのことを急激にしたいと思うようになったのだけれど、その前に、わたしはオーギ
ュドステファ殿下が、
「女性に対して声をかけまくっている」
ということについて聞くべきだと思った。
そして、わたしは、
「旅行先や舞踏会などで、オーギュドステファ殿下が女性に対して声をかけまくっていることも、その延長上の話でしょうか?」
と言った。
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