第10話 遊びまわっている
マドレアリーヌさんは、話をし始める。
「オーギュドステファ殿下は、確かに強引で傲慢な方。でも、それは王妃殿下を始めとして敵が多いので、絶対に屈服しないという姿勢を見せているということが言えると思うの。それだけ幼い頃から王妃殿下と対立、そして、王妃殿下を中心とした反対勢力と対立し続けているのだから、もし、そういう態度を取っておらず、弱気で従順な態度をとっていれば、今頃は王太子の地位を追われていたかもしれない、わたしも決して王太子殿下としては好ましい態度とは思わないけれど、このような状況では仕方のない選択だったのだと思っているの」
「わたしもそれは仕方のない選択だったと思います」
「そうよね。でもオーギュドステファ殿下の反対勢力は、そういう背景を無視して、オーギュドステファ殿下のそうした嫌なところだけを強調するの。まあ、オーギュドステファ殿下の方も、自分の反対勢力だけではなくて、分け隔てなくそういう態度をとるようになってしまったから、これはこれで問題だけれどね」
「反対勢力以外の人たちには、もっとやさしく接するべきだと思います」
「もちろんそうなのだけれどね。とはいうものの、ルデナティーヌさんは、オーギュドステファ殿下のことを理解しようとしているわよね」
「はい」
「ルデナティーヌさんは、オーギュドステファ殿下が『付き合うことになったのだ!』と叫んだ方ですからね」
マドレアリーヌさんはそう言うと微笑んだ。
わたしは少し恥ずかしい気持ちになる。
「そうであるならば、オーギュドステファ殿下が強引で傲慢な態度をとるようになった背景をきちんと理解する必要があるわ。もうルデナティーヌさんはある程度理解できたと思うけど」
「そうですね」
「そして、理解した上で、オーギュドステファ殿下に対しては、人々に対して心からやさしく接することができるように、ルデナティーヌさんが導いていく必要があると思っているの」
「わたしが導いていくのですか? わたしには荷が重い話なのですが」
「ルデナティーヌさんならできるわ。オーギュドステファ殿下はルデナティーヌさんのことが心の底から好きだと思ってるの。そして、ルデナティーヌさんが自分のことを好きになってくれるのを待っているわ。つまり、ルデナティーヌさんからの愛がほしいということね。その相手の言うことですから、きっと聞いてもらえるとわたしは信信じているの」
「でも一方では、『王国内を遊びまわり』、『女性にも声をかけまくっている』と伺いました。そのようなお方が、『わたしの愛がほしい』と思うものなのでしょうか?」
わたしがそう言うと、マドレアリーヌさんは、
「ルデナティーヌさんの言うことも理解するわ。ただ、ここはほとんどの人々が誤解をしている点でもあると言えるわね」
と応えた。
「と申しますと?」
「まず『王国内を遊びまわっているという』ところからお話をするわ。詳しい話は今までしていなかったから、今、しようと思うの」
「それはまず本当の話なのでしょうか? まだわたしには信じられないことですので、まず、そこからお願いしたいと思います」
「お供の人たちと一緒に王国内をまわっているというのは本当よ。それもあまり上等とは言えない服で。それどころか、ところどころ破れているところもあるくらいなのよ。まずその点で批判をされているわね。そして、オーギュドステファ殿下は。もともと食べることが好きなの。とはいっても、贅沢で高価な料理が好きというわけではないのよ。その土地にある庶民的な郷土料理が好きだということね。その料理の食べ歩きをしているというのと、船に乗るのが好きなので、港町に行って船に乗っているということね。また、行く先々で、庶民の子供と遊んでいるという話も聞いているわ。結局のところ、どの話も、王太子という立場であればありえない行動をしていることになる。そして、本来ならば国王陛下の補佐をしなければいけない時に、こうして行動をしているということになる。こうしたオーギュドステファ殿下の行動により、オーギュドステファ殿下が王国内をまわって遊んでいるという話になり、批判の対象になったということね」
「オーギュドステファ殿下のそういった詳しい話は聞いたことがなかったので、ありがたいです。ただ、確かに王太子としてはありえない行動をしていると思いますし、批判をされても仕方がないと思います」
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