第9話 オーギュドステファ殿下の印象
オーギュドステファ殿下が周囲の人たちに対して、強引で傲慢な態度をとるようになったのは、もともとそういう「素質」があったのかもしれないが、王妃殿下によるイジメが大きく影響しているのだとわたしは認識した。
しかし、だからと言って、
「周囲に強引で傲慢な態度をとる」
「王国内を遊びまわる」
「女性に声をかけまくる」
といったことが、許されるというわけではない。
オーギュドステファ殿下は王太子なのだ。
王太子たるもの、王国民の規範としての行動が求められると思う。
この中でも、
「女性に声をかけまくる」
というのは、わたしも女性である以上、一番してほしくはないことだ。
オーギュドステファ殿下がわたしのことを好きだと言うのであれば、そして、わたしに対して、『付き合うことになったのだ!』ということを言うのであれば、すぐにこのことを止めるべきだろう。
オーギュドステファ殿下が王妃殿下への反発からそういう動きをしてしまうのかもしれないが、そうであったとしても、それを乗り越えてほしいと思っている。
とにかく、オーギュドステファ殿下のおかれた境遇には同情はするものの、いい印象は持てないところだ。
わたしは、このマドレアリーヌさんの話をもとに、これからのオーギュドステファ殿下に対する対応を考えていこうと思ったのだけれど、マドレアリーヌさんは、
「今日の放課後、少し時間をとることができる?」
と聞いてきた。
放課後は、それぞれ家の用事があることが多い。
しかし、今日は特に用事はない。
「大丈夫ですけど」
わたしはそう応えた。
「もう少し話をしておかなければいけないことがあるの。今はもう時間がなくなっちゃって、明日また話そうかと思ったんだけれど、今日話をしておいた方がいいと思ったの」
「わかりました」
「では、放課後、またこのレストランでお話をするということで、お願いします」
「よろしくお願いします」
こうして、わたしたちは、この日の放課後、また話をすることになった。
そしてこの日の放課後。
レストランは、放課後も営業している。
ここでお茶をする生徒たちも多い。
わたしたちが利用するのは今回が初めてだ。
わたしたちの目の前のテーブルには、紅茶とお菓子が置かれている。
マドレアリーヌさんは、紅茶を一口飲んだ後、
「今までのわたしの話を聞くと、ルデナティーヌさんがオーギュドステファ殿下に対して、いい印象を持つのはなかなか難しいと思うの。オーギュドステファ殿下がそして、今、この時点で多くの人たちがルデナティーヌさんと同じ印象を持っていると言っていいわ。まずこのことをルデナティーヌさんに伝えなければならなかったことは理解をしてほしい」
と言ったのに対し、わたしは、
「わたしはオーギュドステファ殿下の境遇には同情します。しかし、残念ながらオーギュドステファ殿下にはいい印象は持てません」
と応えた。
オーギュドステファ殿下に対して、いい印象を持つ人はいない気がする。
するとマドレアリーヌさんは、
「そうだと思うわ。でも、わたしはルデナティーヌさんに、わたしがオーギュドステファ殿下に対して思っている印象を伝えたいと思ったの」
と言ってきた。
「マドレアリーヌさんのオーギュドステファ殿下に対する印象?」
「それを伝えなければ、と思って。この三日間、ずっとオーギュドステファ殿下への嫌な印象をルデナティーヌさんに与え続けてしまったので、そろそろわたしの印象を伝えようと思っていたの。わたしは今日、そのことについて話をするつもりだったから、今日のお昼にそのことを伝えようとしたのだけれど、お昼は時間がきてしまって伝えることができなかった。それで、今、時間をとらせてもらったの。ごめんなさいね」
マドレアリーヌさんはそう言った後、頭を下げた。
わたしは驚いて、
「マドレアリーヌさん、謝らないでください。わたしは全く気にしていませんので」
と言って、マドレアリーヌさんに頭を上げてもらった。
「では、話をさせてもらうわ」
マドレアリーヌさんがそう言ったのに対し、わたしは、
「お願いします」
と応えた。
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