第8話 オーギュドステファ殿下の状況
オーギュドステファ殿下は、王妃殿下のイジメに対しても、子供の時はじっと耐えていたのだが、思春期を迎えると、反撃をするようになり、今では大ゲンカになることもめずらしくはない。
ただ、これはもともと持っていた性格ではないか、と思っている人たちもいるようだ。
いずれにしてもこのような状態なので王室や貴族の大半の人たちは、オーギュドステファ殿下を既に見限っているところだった。
このままだとオーギュドステファ殿下の王太子の地位は危うい。
しかし……。
国王陛下だけは、まだオーギュドステファ殿下の能力を信じているようで、王太子を変える意思は今のところはないようだ。
また、王妃殿下の二人の子供のどちらを王太子にするかという問題があった。
ようするにオーギュドステファ殿下の対抗馬を一本化できないでいるのだ。
王妃殿下はどちらの子供もかわいがっている為、最初はどちらかを選ぶつもりだったのだけれど、最近はどちらも王太子にしたいと思うようになっていた。
しかし、王太子になれるのはただ一人。
一本化できないままここまで来てしまった為、王妃殿下の前では仲良くしている二人なのだけれど、それ以外では、ケンカをするほど仲が悪くなってしまったのだ。
王妃殿下は、そういったことを把握しておらず、オーギュドステファ殿下さえ倒してしまえば後はどうにでもなると思っていた。
自分の子供二人がかわいくて、どちらも王太子候補に選ぶことのできない王妃殿下は、最近になって、
「どちらも王太子にする、そして、二人はどちらも国王に即位し、この王国を二人の共同統治にすればいい」
と周囲の人たちに言い出し始めた。
しかし、共同統治はこの王国では今まで一例もない。
この王国では、以前、共同統治をしようとしたことを行おうとしたことはあるようだ。
しかし、結局のところ権力闘争が生じて、最終的には一人の国王の統治に収束されている。
その時も同母兄弟の間の争いだったのだけれど、その二人の仲はもともといい方だったということだ。
そうした仲がある程度いい兄弟でも権力争いというものは発生した。
まして、今の王妃殿下の息子二人は仲が悪い。
オーギュドステファ殿下を王太子の座から外すことができたとしても、今度は二人の間での権力争いは間違いなく発生する。
そうさせない為には、今の時点から、どちらかを選ぶ必要がある。
どちらか一人は、国王になった方を補佐する役割にしなければならない。
王妃殿下にそう進言したオーギュドステファ殿下の反対勢力の人物はいたのだが、王妃殿下は聞く耳を持たなかった。
こうして対抗馬を一本化できないことが、オーギュドステファ殿下の反対勢力の力を少し弱めているところがあると言えると思う。
以上の二点がある為、オーギュドステファ殿下は王太子の地位を維持できているし、今のところすぐにオーギュドステファ殿下の地位が危うくなることはなさそうだ。
しかし、王室・貴族の大半がオーギュドステファ殿下を見限っているという状況が変わらない限り、いずれオーギュドステファ殿下の地位は危うくなっていくと思う。
というのも、こうした人々は、対抗馬の一本化の話を一旦棚上げし、オーギュドステファ殿下を王太子の座から外すことだけを目的として協力し合う可能性があるからだ。
その可能性は、時間が経てば経つほど高まっていく。
それだけオーギュドステファ殿下の危機が近づいていくということになる。
以上のことをマドレアリーヌさんにより伝えられたわたし。
わたしは話を聞きながら、その情報を整理していった。
そして、オーギュドステファ殿下に対する対応策を考えていく時、一番考慮しなければならないのは、
「オーギュドステファ殿下と王妃殿下の仲が想像以上に良くない」
ということだと認識した。
王妃殿下がオーギュドステファ殿下にイジメを行っていたことは、聞いていなかったわけではなかったのだけれど、かなり激しいものだったというのは今日初めて聞いた。
それではオーギュドステファ殿下との仲が悪くなるのも当然のことだろう。
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