第7話 オーギュドステファ殿下の話
この学校にはレストランがある。
生徒たちの間では、メニューが豊富でおいしいと評判だ。
わたしとマドレアリーヌさんはそこで一緒に昼食をとるようになっていた。
その場所で、わたしたちは昼食をとるとともに、おしゃべりをして仲を深めていた。
マドレアリーヌさんはわたしに対して、
「友達になったのだから、わたしに対しては、かしこまらなくていいから、砕けた言葉を使ってね」
と言ってくれた。
しかし、以前は侯爵家令嬢だったわたしだけれど、今は男爵家令嬢。
マドレアリーヌさんは公爵家令嬢なので。身分の差はどうしても考慮してしまう。
それだけではない。
マドレアリーヌさんは美人。
頭が良くて。思いやりがあり、気さくで心やさしい人。
しかも、この学校の中では一・二を争うくらいの気品を持っている人だ。
この学校でも尊敬している人が多いし、わたしも尊敬するようになってきている。
その為、マドレアリーヌさんに対して砕けた言葉を使うのは無理だと言っていい。
マドレアリーヌ様と呼びたいぐらいだったが、さすがにそれはマドレアリーヌさんから断られたので、マドレアリーヌさんと呼ぶことにした。
しかし、最上級のていねいな言葉は使わないにしても、砕けた言葉は使えないことを改めてマドレアリーヌさんに話し、その点は渋々ではあるのだけれど、了承してもらっている。
舞踏会の翌日、わたしはマドレアリーヌさんにオーギュドステファ殿下のことについての話をこのレストランで聞くことにした。
マドレアリーヌさんはオーギュドステファ殿下の幼馴染。
オーギュドステファ殿下のことを良く知っていると思ったからだ。
マドレアリーヌさんは、
「オーギュドステファ殿下が『付き合うことになったのだ!』とおっしゃられたのね」
と言った。
「はい。いきなりそう言うのですから。困惑してしまいました。強引ですよね」
「強引だとはわたしも思うわ。でも……」
マドレアリーヌさんは少し考えた後、
「オーギュドステファ殿下のその言葉には、オーギュドステファ殿下がルデナティーヌさんのことを強く想っている気持ちが現れているということは言えるわね」
と言った。
「それは理解できなくはないんですけど……。とにかくわたしはオーギュドステファ殿下のことを知らなすぎるのです。そこで、マドレアリーヌさんにオーギュドステファ殿下のことを教えていただければ、と思ったのです」
「わたしもオーギュドステファ殿下のことをそこまで詳しく知っているわけではないんだけれど……。」
「マドレアリーヌさんが知っていることだけで結構です」
マドレアリーヌさんは、しばしの間考えた後、
「では、わたしが今の時点で知っている限りのことをお話ししましょう」
と言ってくれた。
「ありがとうございます」
「それではオーギュドステファ殿下のことについて、お話をいたしましょう」
マドレアリーヌさんはそう言った後、オーギュドステファ殿下のことを話し始めた。
話はこの日では終わらず、翌日と翌々日の昼食の時も続くことになった。
マドレアリーヌさんにより、わたしがオーギュドステファ殿下について得られた知識をまとめると次のようなことになる。
オーギュドステファ殿下は今の国王陛下の長男。
幼い頃から王太子の座についている。
しかし、先妻の子の為、その座は揺らいでいた。
後妻として嫁いできた今の王妃殿下は、自分の子である男子二人のどちらかを王太子にしたいと思っていて、二人が幼い頃から国王陛下や周囲にアプローチを続けていた。
この二人はどちらもおとなしくて、オーギュドステファ殿下に比べれば礼儀作法もしっかりしている。
最近は特にその活動が活発化していて、今や王室・貴族の中で大きな勢力になっていた。
そして、今の王妃殿下によるオーギュドステファ殿下へのイジメは、幼い頃から始まっていた。
それも最近、活発化しているとのこと。
こうしたことが原因かどうかはわからないところはあるものの、オーギュドステファ殿下は、幼い頃から強引で傲慢な態度を取り、人の話を聞かない人物になってしまった。
重臣をどなりつけることもしばしば。
そして、本来なら王太子として国王陛下の政務を補佐しなければならないのにも関わらず。それを放棄して王国内を遊びまわるような人間にもなってしまった。
女性に対しても、声をかけまくっているという話。
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