第6話 こいつは酷ェーッ!ゲボ以下の香り漂う汚馴染だぜーッ
「なんなの?!何でそんな冷たいの?子供の頃に将来を誓い合った大事な幼馴染が殺されそうになってるのよ!?!!私を見捨てるつもりなの?!」
「エーッ?
そんな事言ったって学生時代からムーノと浮気してて挙句に人に冤罪かけて謀殺しようとしてきたのもバレてるんだよ?ここで死ななくても死刑か流刑かどっちにしろ遅かれ早かれ死ぬんだから同じでしょ、終わり!閉廷!以上!皆解散!」
パンパンと手を叩きながら話を打ち切ろうとすると、食い下がるようにエレノーラが叫んできた。
「そんなわけないじゃない!!何の証拠もないわ!勝手な思い込みで私を見捨てるの?!私が好きなのはヘクトールだけなんだからっ!!」
エレノーラ、見捨てる気満々の態度をとる俺に一歩も引かないけどここで引いたら有無を言わさず白晶虎にちゅぶれりゅぅぅぅぅぅっ!されるコースで即死だから必死か。うーん、どうしたものかと思っていると白晶虎は一応話が終わるまで待ってくれているようで、館に左前足をかけたままのポーズでチラチラとこっちの様子を伺いつつ、ちょっと枝毛が気になる女子みたいな様子で館に手をかけてない方の手で毛並みを整えながら待ってくれている。
わー優しさが染みるなぁ。一族の母だけあって思慮深いご様子、でも遠慮せずにプチッと潰してもらってもいいのよ??
「なぁ女神、なんかこういう時に使えそうな女神の力とかないのかよ」
「無茶振りしないでよ、女神だって言っても私個人は別に万能でもない超可愛すぎる絶世の美少女なだけなんだから。女神の一般教養として聖女に直接付与する回復や治癒スキルくらいなら使えるけど……あとは私の魔法力が相手の魔法耐性を上回ったら嘘をつかせない魔法のゲロリューゼとかしかないわよ」
「そ れ だ よ !
そ れ 使 え よ !
今 ま さ に お 役 立 ち の 能 力 だ ろ う が ! ! 」
俺がクワッと鬼の形相でツッコむと、面倒くさいとブーブー文句を言いながらゲロリューゼを発動した。この女神アホなのかな、アホなんだろうなぁ。……こんなのが幾つも世界管理してるとか、泣けるぜ!。映像記録用の水晶をスイッチオン、録画開始でイッテイーヨ!
「―――“真実のみを語りなさい”。うん、魔法耐性は貫通したみたい。これで効果中はトールの幼馴染の寝取られ不貞裏切り女は嘘をつけないわ」
「はぁぁぁぁぁぁぁっ?!私に何するのよこのドブスゥ‼!余計なことするんじゃないわよッ!!そこの役立たずをこの毛皮野郎にぶつけてその間に逃げ出す算段の邪魔をしないでよっ!!」
効果は抜群だ!!!!!!いやーそんな所だろうと思ったよ。自分の命がかかってるかもしれないから必死か、そのために人の命を使い潰そうとするのは最悪だけど。
「普通にドン引きだわ、お前人の命を何だと思ってるんだよ」
「自分の命が助かる為なら人の命ぐらい踏み台にするでしょうが!!アンタだってそうでしょ!!」
んなわけねーだろ、俺は自分の命惜しさに人を見捨てることなんかしねーよ!
俺が見捨てるのはお前みたいなクズやゲスだけだわ。
なお、一族の母はそんな話を聞きながら今は館から手を放して、右手の爪を出して爪の形をチェックしているようだ。わぁー女子力高いですねー。話が終わるまで待っていただいてお気遣いすみせん。
「でさぁ、ムーノ自身が言ってたけど俺に隠れてムーノとよろしくしてたんだろう?」
「そうだけど、それが何?
そもそも地方の田舎貴族のアンタと侯爵家のムーノじゃ男としての、いいえオスとしての価値が違うでしょ!!自分の身分と身の丈ってのを知りなさいよね。貴族学園に行って私は理解したのよ、この世は金と地位だってね!!田舎の地方貴族の妻になって貧乏くさい住人に領主の妻として担がれながら一生を終えるなんてまっぴらごめんだわ!!」
お、おぉう。俺ににこやかに接してる裏でこんな事考えてたのか女って怖ェ……。
「うちのカス親達が結んだ婚約に従うよりも私はこの美貌で、自分自身で成り上がってやるのよ!だからムーノにすり寄って、アンタを始末させるように唆して、実行に移させたのよ!!それの何がいけないのよ!なのに、あんなに自信満々だったのにしくじりやがってぇぇぇぇ!!」
まじかよ、しれっととんでもないことゲロったけどムーノの裏で糸引いていたのこいつなのかよ。なんかもう言葉が出ないので唖然とするしかない。ゲロリューゼすっげぇ!
「キィィィッ、折角侯爵家に嫁げると思ったのになんでこんなことになるのよぉ!!上流階級のブスどもに負けられないからちょっと装飾品作るために毛皮剥いだだけじゃない!!きちんと領民攫って偽の犯人にでっち上げて殺しておいたのに何でバレたのよぉ!!」
おーおー、女神の術が効いているのかよくゲロするなぁ。そしてやってる事どクズすぎて段々怖くなってきたよ。嘘……俺の幼馴染、非道すぎ??前世でもエリオットの幼馴染は魔女マルールとして暴れまわってたけど、俺の幼馴染もこのパターンかよ。
『愚かな。無辜の民を犯人に仕立て上げてその場に遺そうと、我が子の毛皮の匂いを辿れば犯人探しなど容易い事』
ここで“一族の母”が解説をしてくれた。怒気を籠めた静かだが凄みのある声にエレノーラは震えあがっている。あぁ、そうか毛皮剥いでもちかえってるんだから臭いたどれば簡単にわかるもんな。エレノーラ自爆から綺麗に墓穴掘りすぎィ!!イキすぎィ!!ほらやっぱりお前が悪いんじゃん、罪を償うために潰されなよ。
「あ、あ、あああああああわ、私は……私が悪いんじゃない!!上流階級に混じる為の装飾品ひとつ用意できないこのクソみたいな家が悪いんだからっ!!私はいわばドラゴンよ!格言にあるでしょう、リザードがドラゴンを産むって!私という美貌と英知を与えられたドラゴンはこんな辺境に埋もれるべき存在じゃないのよぉぉぉ!」
「まぁ、なんでもいいさ。犯した罪には罰がついてまわるんだよ。俺との事については婚約破棄したいならそう言ってくれれば普通に相談にのったしこんなややこしい事態にこんがらがったりもしなかったとは思うけどな」
「別にアンタが嫌いになったわけじゃないわ、ただ成り上がるチャンスがそこにあったから手を伸ばしただけよっ、私が幸せになるために!!大切なのは自分が幸せになる事でしょう?そのために人を踏み台にして何が悪いの?!過去の思い出だとか一緒にいた時間とかそんなくだらないものより未来の幸福でしょ!!」
エレノーラの言葉を聞いているとやってられない気持ちになる。はぁ、金と権力は人間を狂わせるっていうけど魔女マルールに続いてまさか自分の幼馴染がイカれてるのを見せられることになるとは思わなかったよ、たまげたなぁ。っていうか自分勝手極まりない考え方や態度は魔女マルールにそっくりだなぁ。デジャヴ感じちゃう。
「はー、つっかえ。話になりませんわ。“一族の母”、待ってもらって申し訳なかった。話にならないし罪の自白もさせたから、あと好きにしてくれ」
『何、構わぬ。それではいざ――』
そういってぎゅむぎゅむと館を潰そうとする行動を再開する“一族の母”。左右の前足を館の上にのっけて体重をかけて踏ん張る姿はネコチャンが箱を潰そうとしているようにもみえて観てる分にはちょっとかわいい。ネコチャーン(体長10数m)!
「があああああああああああっ!やめろっこのケダモノがあああああ!!!こんなところで……死にたくないぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃっ!!この私が!死んでたまるもんですかぁぁぁぁ!!ぐおぉぉぉっ!」
窓枠にしがみつき、泣きながら発狂と怒りの叫びをあげて生にしがみつこうとするエレノーラだけれどお前の命運は多分終わってるんだなぁ、どうあがいても絶望よ。
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