第16話 再会

地下牢は一瞬にして静まり返った。

聞こえるのはローブの人のブツブツ音だけだ。

(騎士さんはサイレント中)


「今,,,なんて?」


父は顔を青くして絞り出すように声を発する。


「結婚相手ならいるよ?」


そんな父に僕は満面の笑顔で現実を叩きつける。


「『アンチライ』。その話は本当なの、ルイダ。また逃げるための言い訳じゃなくて?」


驚いた母が嘘看破の魔法を使い僕に問う。

この魔法は嘘をついた瞬間ブザーのような音が鳴る魔法だ。

しかし僕は嘘なとついていないのでもう一度ハッキリ答える。


「はい。結婚相手なら居ます。なんなら2日後に結婚します。」


ブザー音は鳴らない。

なぜなら嘘など最初からついてなどいないからだ。

しかしその程度では父は諦めなかった。


「いや、『勇者』スキルのせいで音がならなかったんだ。家族以外でお前と関わりのある者などいるはずがない!」


「僕はこの国のために立派な勇者を目指します!」


辺りにブザー音が鳴り響く。

その瞬間父は膝から崩れ落ち、母は満面の笑みで喜び、おじさんは少し残念そうにしている。

因みに王女は僕に嫁がなくても良い嬉しさと僕のついた嘘への不満が混ざり微妙な顔をしている。


「どこの誰なの!?貴族なの!?平民なの!?いや、この際どちらでもいい!あなたにも遂に春が来たのね!私は今人生で1番嬉しいわ!」


不味い。今までの反動で母が壊れてしまった。

そんな横で父は静かに泣いていた。

ドンマイ!

そんな愉快な話をしていると急に牢の外の天井から爆発が起きた。

この瞬間母の顔がいつも通り厳しいものに変わり結界を張る。

結界のおかげで僕らは瓦礫から身を守る。

穴の空いた天井の方に目を向けるとそこから一人の少女が落ちてくる。

落ちて来た少女は目当ての人物を見つけると口を開く。


「,,,国王,,,見つけた。あなたに話がある,,,,,,」


少女の声はとても静かだった。

しかし彼女はとてつもない存在感を発していた。

その圧倒的な存在感に金髪騎士は抜剣し、ローブの女は杖を向け詠唱を始め、母はその少女を睨みつけいつでも魔法を打てるように手を前に出す。

国王と王女は腰を抜かしている。

しかしこの場でも動じない者が二人いた。

1人は父。

ショックのあまり完全に自分の世界に入っている。

もう1人は僕だ。

僕が動じない理由は至って単純。

その少女と会うのは2度目だからだ。

僕は目の前にいる女神のような少女に話しかける。


「ディア。お昼ぶりだね。」


「,,,,,,ルイダ?」


少女がこちらに気づき不思議そうにコテン、と顔を傾ける。

とても可愛い仕草で死にそうである。

しかし、意識のある者はこんなに可愛いディアではなく僕に注目している。


「ルイダ、この子はあなたの知り合いなの?」


母が真顔で問う。


「うん。今日知り合ったばかりだけど。」


「一体どうやったら一日に二回も魔王に遭遇するの!?」


「,,,魔王?誰の事?」


「目の前にいるこの子よ!」


なんと僕が婚約をしたのは女神では無く魔王だったらしい。

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