第14話 なんかもうどうでも良くなってきた
「ふわぁ〜」
僕は牢屋の中で目を覚ます。
あの後、僕は地下牢に連れていかれて手錠を掛けられ放置された。
しかし、誰にも邪魔されない暗い場所は僕にとって最高の場所であり、そのまま寝てしまった。
二度寝をしようと横になると牢屋の外から声をかけられた。
「なぜこの状況で二度寝ができるのですか。」
声のする方に寝返り目を向けるとそこには第1王女が居た。
正確には第1王女の左右に女騎士とローブの女性が立っている。
「おい、貴様!マリアナ王女殿下の御膳であるぞ!跪け!」
右の金髪の騎士が叫ぶ。
地下牢で声が響くので耳が痛い。
第1王女と左のローブを見ると2人とも耳を抑えていた。
「『サイレント』」
僕が呪文を唱えると金髪の騎士の声が消える。
金髪騎士は口をパクパクしているが、魔法の効果で何も聞こえない。
「なんて精密な魔法の制御。サイレントは本来自分の物音を消すための魔法。それを自分以外に付与した上に範囲を1人分に限定するなんて,,,」
ローブの人は自分の世界に入ってしまった。
これ以上無視するともっと面倒くさくなる気がするので体を起こし要件を聞く。
「それで、王女様が何用でごぜーますか」
「あなたは敬意と言う言葉を知っていますか?」
「ええ、知ってますよ?これでも公爵家なもので、敬意とは相手を敬う意思の事。それが何か?」
「つまりあなたは私を敬う気はないと?」
「えぇ、こちらの意見も聞かずに勝手に面倒を押し付ける人達をどう敬えと?」
牢屋の中なのをいいことに言いたい放題言う事にした。
どうせあちらはこっちに来れない。
そして僕は勇者なんてなる気は無い。
「国の貴族は国の為に尽くす義務があります。つまりこちらの意見を無視することはできません。」
「ならば僕は公爵の席を返上します。元々我が家は公爵の血筋ではない。あなたのお父上が僕の父を無理やり公爵の席に押し込んだだけだ。ならば、王位継承権のないあなたが新しく公爵の席に座ればいい。」
「私はこの国のため他国に嫁がなければなりません。なのでそれは却下です。」
「それはあなたの意見だ。実際に陛下がその事を仰ったことは無いはずだ。」
「なぜそんなことが部外者の貴方にわかるのですか?」
「それは,,,」
言葉を続けようとした時こちらに近づく声が聞こえた。
「だから言ったんだ!こんなことすればうちの息子は確実に問題を起こすと!」
「だが、こうしなければ事実を知っている者達になんと言われるか,,,」
「ウィル、そこは上手い具合にごまかすのよ。あなたは運だけはいいんだから。」
「カーム。運だけって酷くない,,,」
そこに現れたのは陛下と父と母であった。
「お父様!ドイメーン夫妻!なぜここに?」
王女は驚きながら尋ねる。
僕は王女のことなど無視して国王に話しかける。
「やぁ、さっきぶり。ウィルおじさん。」
「さっきぶりだねルイダ君。まさか君がルイ以上の面倒くさがりだとは思ってもみなかったよ。カエルの子はカエルではなくウシガエルだったね。」
「ウィルおじさん、ドンマイ」
「君が言うんじゃないよ。はぁ〜」
僕は陛下の本当の顔をしっていた。
なぜなら頻繁にうちに来るからだ。
今、この国の政治はほとんど父が運営している。
陛下は人として賢い方ではあるが王としてはそうではない。
王とは国の為ならば仲間を、家族を、自分を捨てられるのが最も良い。
しかし、ウィルおじさんは国よりも身内を優先してしまう。
そうなると、少なからず政治に偏りがでる。
すると優先されない方は反乱を起こし国が傾く。
そうならない為におじさんが父に相談に来る。
父はいざとなれば家族以外は捨てられる。
何も捨てられない者より殆どを捨てられるものが政治には向いている。
そんな理由で僕は陛下のことを近所のおじさんくらいにしか思っていない。
「お父様!私の役目は他国に嫁ぎこの国の利益になること。そうですよね!」
さっきも言ったがおじさんがそんなことを考えるはずがない。
だっておじさんは出来れば全て捨てない善人だから。
「そんなわけないじゃないか。親が見ず知らずの男に自分の娘を嫁がせるものか。」
うんうん。やはりおじさんはそんな事しない。
「お前はドイメーン家に嫁ぐんだ。」
「「は?」」
初めて王女と意見が合った。
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