第13話 タイトル回収
目覚めるとそこは豪華な部屋の中だった。
ふっかふかで寝心地の良さそうなソファ。
精密な彫刻が彫られた机。
意味のわからない絵画が飾ってあった。
「だいたい分かった。」
「それでは説明は不要ですね。坊っちゃま。」
とある破壊者の真似をしてると後からサリーが声をかけてきた。
すぐに逃げようとするが、体に力が入らない。
きっとサリーの毒針と息の詰まるような礼服 のせいだ。
僕は眠らされた後、ここに連れてこられて着替させられたようだ。
ここは恐らく王城だ。
つまりはこの先めんどくさい謁見が待っている。
なんかもう考えるのも面倒くさくなってきた。
早く終わらせてディアに会いに行こう。
「サリー。謁見は後どのくらいで始まるの?」
「あと5分後です。」
5分か,,,それじゃ仮眠も取れないな。
よし。少し早いが、謁見の間の扉の前まで行くか。
もしかしたら少し早く始まってさっさと終わるかもしれないし。
「サリー、少し早いけど謁見の間の前まで案内してくれる?」
するとサリーは驚いたようにこちらを見る。
「坊っちゃまが、時間前に自分から行動を!?どこか調子の悪い所はありませんか?」
「いや、さっさと終わらせて、さっさと帰りたいから早く終わらせようと思っただけだよ。」
「なるほど。坊っちゃまらしい理由で安心しました。てっきり坊っちゃまがショックのあまりおかしくなってしまったのかと,,,」
この冥土は礼儀を知らないのだろうか?
そんなこんなで扉の前までやってきた。
ここに来る途中兵士たちにすごくキラキラした目で見られたのだが、まさかもう僕が勇者だと広まっているのだろうか?
もしそうならプライバシーの侵害で教会を訴えてやる。
「あの兵士たちは坊っちゃまのスキルのことは知りませんよ。坊っちゃまだからあのような目で見られているのです。」
当然のように心を読んだサリーが答える。
それはそれで嫌なんだけどな。
僕の家の成り立ちは少し特殊だから注目される。
それに加えて勇者スキルなんて面倒を増やすだけだ。
誰かに譲れないかな〜。
「ルイダ=ドイメーン様!入場ー!」
扉の横の兵士の声と共に謁見の間が開かれる。
扉が完全に開くのを待ち、僕は歩き出す。
そして玉座に座る国王陛下の前で跪く。
「よくぞ参ったルイダ=ドイメーン。」
ウィリアム=ファルマール国王陛下。
先代国王の悪徳政治から民を救った賢王。
しかし、その実はただ運が良かっただけ。
先代国王は民から金銭を絞れるだけ絞り私腹を肥やす愚王だった。
しかし、それを見兼ねた国民が当時第1王子だった陛下を持ち上げ、革命を成功させた。
陛下がしたことと言えばウチの父の説得である。
父は元々下級貴族の次男だった。
父は家を継がなくていいので自由気ままに冒険者をしていた。
そんな時、城を抜け出した当時の陛下とたまたま一緒に冒険に行った。
それから2人は中を深め、陛下は頭の良い父に
政治のことなどを相談していた。
そんな時革命が起こり当時Sランク冒険者だった父は革命の指揮を執った。
そしてその功績として父は革命で空席になった公爵の席に無理やり押し込まれ、今でも相談役としてこき使われている。
そんな成り立ちのせいで平民や下級貴族からは尊敬の目で見られ、血筋を重要視する古参の貴族からは目の敵にされているのだ。
「此度の報告は聞き及んでいる。この際ここに居る皆には伝えておこう。このルイダ=ドイメーンこそ、今世代の勇者である!」
周りの貴族がザワめく。それもそうだ。
愚王の搾取が無くなったとはいえ、元々あった魔王の問題は解決していない。
そんな中、勇者を有している国は他国に優位に出られる。
つまり勇者がいるだけで国の利益になるのだ。
「勇者が現れたならばもう魔王の支配など恐れるに足らん。我らの世代で魔物による恐怖を消し去るのだ!」
周りの貴族が盛り上がる。
男は雄叫びを上げ、女は大きな拍手を国王に送る。
まずいな。断わりづらい雰囲気になってしまった。
すると、陛下の横に座っていたマリアナ=ファルマール第1王女様が僕の目の前まで足を運ぶ。
そして、両膝をつき手を合わせ上目遣い使いで口を開く。
「勇者様。魔王を倒し、この世界を救ってください。」
誰もが1度は夢見る勇者。
自分がなれるなら誰もがなるだろう。
しかし、王は見誤っていた。
今目の前にいるのが自分のよく知る親友ルイマ ジーダ=ドイメーン公爵の息子であることを。
その息子が親友を超える面倒くさがりであることを。
自分の中の何かが切れる音がした。
誰もが羨むようなこんな状況で僕は答えた。
「パスで」
その瞬間、今までの状況から想像もできないほど謁見の間は静まり返った。
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